アニメ化されたライトノベルの傾向と対策
もう2008年も半分が過ぎようかという6月、梅雨にも入って世間には7月新番の情報が溢れるようになりました。[id:moonphase:20080611#animelist]*1でも恒例のアニメ新番リストが掲載されました。せっかくですので、以前から気になっていたラノベ原作アニメ、というかアニメ化されたライトノベルの傾向と対策(?)について調べてみようと思います。
ライトノベルがアニメの原作としてそれなりに適している、というのは一般の了承を得られると思います*2。例えば最近の話ですと、鎌池和馬『とある魔術の禁書目録』(電撃文庫)のアニメ化が発表されたりしました。この『とある魔術の禁書目録』ですが、最新刊は何と16巻。近年の少年まんがでよく見られるような長大な作品のようです。アニメ化されるときには、原作との相乗効果を狙ってのことだと思われますが、基本的に原作が続刊中であることが少なくありません。では、その原作がスタートした時期にはどのような関係があるのか気になりました。
というわけで、以下に近年(2005年以降)にアニメ化された作品*3のリストになります。データについてはid:moonphaseおよびwikipedia:Category:各年のテレビアニメを大いに参考にさせていただきました。ありがとうございます。
放送時期 | タイトル | 著者 | レーベル | 発行年 |
---|---|---|---|---|
2005冬 | 『スターシップ・オペレーターズ』 | 水野良 | 電撃 | 2001/03 |
『イリヤの空、UFOの夏』 | 秋山瑞人 | 電撃 | 2001/10 | |
2005春 | 『トリニティブラッド』 | 吉田直 | スニーカー | 2001/04 |
『今日からマ王!』 | 喬林知 | ビーンズ | 2000/11 | |
2005夏 | 『フルメタル・パニック!』 | 賀東招二 | 富士見 | 1998/9 |
2005秋 | 『灼眼のシャナ』 | 高橋弥七郎 | 電撃 | 2002/11 |
『銀盤カレイドスコープ』 | 海原零 | スーパーダッシュ | 2003/6 | |
2006冬 | 『陰からマモル!』 | 阿智太郎 | MFJ | 2003/7 |
『半分の月がのぼる空』 | 橋本紡 | 電撃 | 2003/10 | |
『しにがみのバラッド。』 | ハセガワケイスケ | 電撃 | 2003/6 | |
2006春 | 『吉永さん家のガーゴイル』 | 田口仙年堂 | ファミ通 | 2004/1 |
『涼宮ハルヒの憂鬱』 | 谷川流 | スニーカー | 2003/6 | |
『いぬかみっ!』 | 有沢まみず | 電撃 | 2003/1 | |
『彩雲国物語』 | 雪乃紗衣 | 角川ビーンズ | 2003/10 | |
『ザ・サード 〜蒼い瞳の少女〜』 | 星野亮 | 富士見 | 1999/1 | |
『神様家族』 | 桑島由一 | MFJ | 2003/6 | |
2006夏 | 『ゼロの使い魔』 | ヤマグチノボル | MFJ | 2004/6 |
2006秋 | 『BLACK BLOOD BROTHERS』 | あざの耕平 | 富士見 | 2004/7 |
『ゴーストハント』 | 小野不由美 | ティーンズハート | 1989/7 | |
『護くんに女神の祝福を!』 | 岩田洋季 | 電撃 | 2003/9 | |
『少年陰陽師』 | 結城光流 | ビーンズ | 2001/12 | |
2007冬 | 『ロケットガール』 | 野尻抱介 | 富士見 | 1995/3 |
2007春 | 『風の聖痕(スティグマ)』 | 山門敬弘 | 富士見 | 2002/1 |
2007夏 | 『ムシウタ』 | 岩井恭平 | ニーカー | 2003/4 |
『バッカーノ!』 | 成田良悟 | 電撃 | 2003/2 | |
『撲殺天使ドクロちゃん』 | おかゆまさき | 電撃 | 2003/6 | |
2007秋 | 『ご愁傷さま二ノ宮くん』 | 鈴木大輔 | 富士見 | 2004/9 |
『レンタルマギカ』 | 三田誠 | スニーカー | 2004/8 | |
2008冬 | 『狼と香辛料』 | 支倉凍砂 | 電撃 | 2006/2 |
2008春 | 『アリソンとリリア』*4 | 時雨沢恵一 | 電撃 | 2002/3 |
『紅』 | 片山憲太郎 | スーパーダッシュ | 2005/12 | |
『かのこん』 | 西野かつみ | MFJ | 2005/10 | |
『我が家のお稲荷さま。』 | 柴村仁 | 電撃 | 2004/2 | |
『狂乱家族日記』 | 日日日 | ファミ通 | 2005/6 | |
『図書館戦争』 | 有川浩 | メディアワークス*5 | 2006/3 | |
2008夏 | 『乃木坂春香の秘密』 | 五十嵐雄策 | 電撃 | 2004/10 |
『薬師寺涼子の怪奇事件簿』 | 田中芳樹 | 講談社文庫 | 1996/10 | |
『スレイヤーズREVOLUTION』 | 神坂一 | スニーカー | 1990/1 |
さて、だらだらとこのような表を書いたのには意味がありまして、自分は仮説として2003、2004年頃の作品ばかりアニメ化されているように感じているのです。言い換えるならば、まんががすぐにアニメ化されるのに対し、十分に時間をおいた後にアニメ化されているのではないか、と感じているのです。一方で、2005年以降の作品があまりアニメ化されない、すなわちライトノベルブームの弊害による何らかの悪影響が働いているのではないか、などと要らぬ心配に胸焦がせ、夜は眠れず昼にグースカ生活を送りそうになっているわけです。
というわけで、上記の表をもとに、2005年以降にアニメ化された原作ライトノベルのスタート時期をまとめると、次のようになります*6。
発行年度 | 本数 |
---|---|
2003 | 12 |
2004 | 7 |
2001 | 4 |
2002 | 3 |
2005 | 3 |
2006 | 2 |
まず真っ先に感じるのは、2003、2004年の隆盛ぶりです。アニメ化された時期的に多いだけとも考えられますが、いわゆるライトノベルブームの真っ只中の作品が多いです*7。アニメ化されるには多少なりとも時間がかかりますので一概には言えませんが、アニメ化を人気のバロメータとするならば、2003年頃の作品人気がうかがえます。
一方、近年では面白い現象も確認できます。2003、2004年作品がこぞってアニメ化されたのは2006年から2007年にかけてです。つまり、原作から遅れること3年くらいでアニメ化されているといえます。その調子で進んでいくならば、2008年現在においては2005年作品が続々アニメ化されてもおかしくないはずです。しかし、例えば先日アニメ化が発表された『とある魔術の禁書目録』は2004年の作品ですし、夏からアニメ化が決まっている『乃木坂春香の秘密』も2004年作品です。そういう意味では、いまだ2003、2004年の遺産に頼っていると言える状況かもしれません。2008年に入って2005年作品が3本(全9本中)アニメ化されていますが、2006年における2003年作品の8本(全14本中)と比較すると少ないです。アニメの総本数自体が減りつつある現状において確信的なことはいえませんが、今後2005年以降の作品がどの程度アニメ化されるかで新たな流れが見えてくるかもしれません。ただ2005年以降の作品も少なからずアニメ化されている現状を鑑みるに、そんなに悲観することはないのかもしれませんね。
*1:毎度お世話になっています! はてなを始める前からずっと読ませていただいています。
*2:今回調べていて気が付いたのですが、そうであっても実は数的には大変少ないのです。1クール(3ヶ月)あたり2、3本あれば良いところです。児童文学等の他の小説ジャンルのアニメ化と比較しても、同等かちょっと多いくらいです。時期による差はありますが、平均して全アニメの10%くらいでしょうか。近年多いゲーム原作よりもかなり少ない印象です。
*3:初出のものだけです。続編、再放送等は煩雑になるのを避けるため、除外しています。ただし続編であっても2005年以降に初出の際には記載しています。また原作小説のコミカライズのアニメ化的なものや、メディアミックスによる同時進行のものも除外しています。
*4:原作は2作品で『アリソン』と『リリアとトレイズ』を合わせて『アリソンとリリア』としてアニメ化。『リリアとトレイズ』は『アリソン』の続編に相当するため、ここでは『アリソン』のみ取り上げる。
*5:電撃文庫ではなく、ハードカバー。実情としては電撃文庫の一部と見て良いかも。
*6:1本しかない年は除外しました。
*7:ライトノベルブームをどのように定義するかは難しいですが、例えば宝島社の『このライトノベルがすごい!』が刊行され始めた2004年と考えても良いと思います。その時のランキングはwikipedia:このライトノベルがすごい!を参照していただきたいのですが、2003〜2004年作品が多いのが目に付きます。