『School Rumble』完結記念、アニメ版監督・高松信司の「フォーマット崩し」

 長い長い連載となった小林尽School Rumble』の最終巻がついに発売されました。最終的に丸6年という長期の連載であり、それまでの『週刊少年マガジン』にはなかった(というか、ありえなかった)作風で、最後まで楽しませていただきました。そもそもページ数からして特殊で、時期によって7〜12ページをさまようフレキシブルな構成のまんがでもありました。あそこまで数多くのキャラクタが、しかもそのキャラクタを立たせながら群像劇を繰り広げるというのは、この作品か氷川へきるぱにぽに』かといったところでしょう。
 内容的にも学園生活のイベントをなぞるだけでなく、バスケをしたり、漫画を描いたり、漁船に乗ったり、サバゲーをしたり、最終的には歩行祭をしたりとバラエティに溢れていました。まあ、そのような当初のラブコメ軸を見失い(?)、キャラクタ的にもエピソード的にも様々な方向にエネルギが散逸していったのは賛否両論だったと思いますが、このような自由で「何でもあり」な作品であることが何よりも楽しかったです。
 メディアミックス展開も、赤松作品を中心にコアファン向けに移行しつつあった講談社の戦略とも合致し、広く行われ成功を収めました(多分)。特にアニメーション化は複数回にわたって行われました。

  1. スクールランブル(2004年、TV、通称・一学期、全26話)
  2. スクールランブルOVA 一学期補習(2005年、OVA、全2話)
  3. スクールランブル 二学期(2006年、TV、全26話)
  4. スクールランブル 三学期(2008年、OAD<単行本付録>、全2話)

 アニメーションの宣伝として行われていて、高野晶役の清水香里がメインパーソナリティを務めていたラジオ番組『スクランお茶会』について色々語りたいこともあるのですが、今回はおいておいて。さて、この4回のアニメ化のうち、「二学期」を除く3本の監督を担当したのが高松信司です。
 高松信司といえば、かつては『こちら葛飾区亀有公園前派出所』、最近では『銀魂』の監督(後に監修)として有名ですが、この監督の持ち味のひとつは既存のテレビアニメの持っているフォーマットを崩してくるところにあると考えています。それはこの『スクールランブル』でも顕著です。

放送形態としての番組フォーマット崩し

 CMを除くと、一般的なテレビアニメーションは上のような構成になっています。ただし、アバンやエンドカードは番組によってあったりなかったりしますし、3話構成(『サザエさん』的なAパート、Bパート、Cパート*1)のものもあります。テレビアニメ『スクールランブル』(一学期)は、基本的に3話構成のアニメーションになっています。
 では3話構成だとして、Cパートはどこに入れれば良いのでしょうか。一般に3話構成の場合、オープニングとエンディングの間にA、B、Cパートが入ることが多いです。そこで、例えばアバンの代わりに長いアバンとしてAパートをやってしまったり、エンディング時間を早めてエンディング後にCパートをやったり等の様々な試行が行われました。
 個人的にとても驚いたのが第25話「ボーー!プワーン!ギュイーン!」です(このサブタイトルについては後述します)。機会があれば見て欲しいのですが、CMを除いて開始20分頃にオープニングが流れるのです。ネタばらしをすると、この話は主人公のひとりが漁船に乗るエピソードが前回のCパート〜今回のAパートにあって、その中でオープニングのかわりに「ソーラン節」的な民謡調の漁の歌とともに力強い筆文字の踊るオープニング的なものが流れたのです。で、代わりに本来のエンディングの位置でオープニングが流れたのです。確かにそう考えると、映像はオープニングのものですが、流れるテロップはエンディングのものでした。ですが、自分はあれを見たとき、とても驚いたのです。

 上は一例に過ぎず、見ていただければパートごとの時間やアバンなど、かなりフレキシブルな構成で作られているのが分かると思います。このような番組構成フォーマットを崩すのは、後に『銀魂』でも大いに発揮されたと聞いています(申し訳ありませんが自分は未見です)。

冒頭に挿入される注意のフォーマット崩し

 1997年のポケモンショック以降流されるようになった悪魔(?)の呪文「テレビを見るときは部屋を明るくして離れて見てね」ですが、高松監督はこれをも柔軟にもてあそびます
 アバンのひとつの活用法として、前回までのあらすじの紹介があります。そこで本作では前回の映像を用いて、キャラクタに「テレビを見るときは〜」を喋らすという、いわゆるMAD的な手法を取ったりしています。
 例えば第5話「燃える初恋!燃えるお茶会!燃えるソフトボール!」冒頭では、前回にあった「相手の思っていることが文字で見える」という1エピソードを用いて、注意メッセージが提示されるというようなことをやっています。

サブタイトルのフォーマット崩し

 サブタイトル云々の前に、まずサブタイトルの提示方法からして、従来のフォーマットを崩しています。従来はオープニング後の本編に入って少ししてからアイキャッチとして提示されることが多いですが、本作ではオープニングのラストカットがサブタイトル提示画面になっています。
 サブタイトルでもいろいろやらかしている本作ですが、ひとつに「文字にできないサブタイトル」があります。ずばり第25話です。まずは見てください。

 これは便宜上「ボーー!プワーン!ギュイーン!」と新聞等のラテ欄で表記されました。こんなのもありなんだなあ、と正直感心しました。
 また史上一番長いサブタイトルというのもあります。第26話(最終話)です。

突然の「さよなら」…迷い込んだラビリンス…あなたはだれ?…教えて。「すれちがい」「片想い」とどけ、ボクの気持ち。とどけ、ワタシの想い。たぶん一度しかない季節、青春の1ページ。これが最後のチャンス、確かめたい…キミの気持ち。伝わる言葉、伝わらない想い。あの日の告白、永遠の一日、だけど…いつまでも続いていく、わたしたちの「いま」。そして明日へ…「スクールランブルフォーエバー」

 187文字で史上最長らしいです。ちなみにラテ欄では「突然以下略」と表記されたそうです。というか、はてなキーワードに「突然の「さよなら」…迷い込んだラビリンス…あなたはだれ?…教えて」として登録されていているのに吃驚。キーワードページでは他の長いサブタイトルなど、情報が分かりやすくまとまっているので必読です。ちなみに最長第2位は同じ高松監督の『銀魂』第75話で「『仕事のグチは家でこぼさず外でこぼせ!って言うからちょっとこぼさせてもらうけどね「侍の国」僕らの国がそう呼ばれていたのは今は昔の話…とか言って始まったこのアニメもはや一年半。あんな事こんな事いろんな事があったよね。で、そろそろ色々振り返ってもいいかなーと思ったのに「チェッなんだよ総集編かよ、手抜きじゃね?」とかアニメだって作るの大変なんだから文句言うのやめなさい!』」の182文字らしいです。高松信司、一人舞台ですね(笑)。
 ちなみに第二期『スクールランブル二学期』(金崎貴臣監督)の最終話では、これに呼応する形で、史上一番短いサブタイトル「.」(ピリオド)というのをやっています。イカスぜ!

まとめ

 以上、『スクールランブル』および高松監督の「フォーマット崩し」の紹介でした。ここにあげたのはほんの一例に過ぎませんので、機会があれば是非見て欲しいと思います。このようなものも高松監督のただのオナニーめいた暴走では決してなく、良い意味で無軌道だった原作とのマッチングが、相乗効果を上げていたのではないかと考えています。『スクールランブル』はテレビ東京開局40周年記念番組ということもあってか、音楽がとても優れています。本編BGMもすごいのですが、何よりエンディングテーマである小倉優子『オンナのコ♡オトコのコ』がすごい。作詞作曲はピチカート・ファイヴでお馴染みの小西康陽なのですが、完璧な小西サウンドの上に乗っかった小倉優子の破壊力は必聴です。
 以下、戯言です。ついに『ストライクウィッチーズ』最終回でした。あんなにも感情を揺さぶられるとは、放送開始前は正直思っていませんでした。大変素晴らしい作品で、幸運な出会いができて良かったと思います。昨年の『ロミオ×ジュリエット』で完全にゴンゾを見捨てた身としては、まさかこのようなことになるとは思いもしなかったです。嬉しい誤算とはまさにこのことでしょう。
 だけど、小説版最終巻や今後のメディアミックスに対する期待とともに、一言。
 結局、ネウロイの正体は何なんだよ!

*1:よくCパートと言うとエンディング後のパートを示すことが多いですが、ここでは3話目を指します。