地上デジタルラジオでAMラジオがサイマルされる時代のあとに

 お久しぶりの自意識過剰の俺様ちゃんです。なんて書くと、ちょっと古いタイプのアニラジリスナーは、JCM(セントラルミュージック文化放送系制作会社)所属のディレクターである俺様ちゃん川口こと川口泰三氏を思い浮かべるのではないでしょうか。『緒方恵美の銀河にほえろ!』が懐かしいですね。ところで、9月からニッポン放送のヤングタイム(で良いのかな。22時からの帯枠)が『銀河に吠えろ!宇宙GメンTAKUYA』ってのになったらしいんですけど、どうなんですかね。MySpaceタイアップというのは、なかなか興味深いですが。タイトルにもうちょっと気を使えよ!とは思います。最近のひと(?)に向かっては「僕様ちゃん」と書いておいて、西尾維新ファンを姑息に狙うのも良いかもしれません。うにー。なんてね。
 2008年9月29日から関東圏のAM放送が地上デジタルラジオの新チャンネルでサイマル放送されるようになりました。一応説明しておくと、地上デジタルラジオとはいわゆるワンセグ用に放送されている地上波デジタル放送の一種で、PC用ワンセグチューナーやauの一部対応機種で聴取可能です。サイマルというのは、あるチャンネルで放送されているものをそのまま他のチャンネルで放送するという形態で、現在の地上デジタルテレビと地上アナログテレビの関係が代表的です。
 セグメントという言葉は、いわゆるワンセグの普及期において取りざたされた単語ですが、意外と正確な内容は知られていないように思われます。自分もそうですので、少し調べてみました。まず1チャンネルの帯域幅は5.7MHzであり、それは13のセグメント(分割)から構成されます。アナログ放送は1チャンネルは1チャンネルとしてしか利用できませんが、デジタル放送では13のセグメントを3つのチャンネルに分割して利用することが出来ます。つまり、1チャンネル分の帯域幅で最大3チャンネルの放送ができるということです。13のセグメントのうちの1つを用いて行われる移動体向け簡易動画が、いわゆるワンセグ(1セグメント)放送と呼ばれるものです。
 地上デジタルラジオはワンセグの動画と同じく、1セグメントを用いて行われている音声放送です。一応、アナログテレビ停波後の2011年7月以降に開始されるサービスですが、東京・大阪では2006年10月から実用化試験が行われています。東京では9月までは、以下のようなチャンネル構成になっていました。

 BSデジタルラジオを思い出させる、不穏な(笑)チャンネル構成ですね。もしかしたら存在を知らない方もいるかもしれないですが、BSデジタルラジオとはBS-iなどでおなじみのBSデジタル放送(テレビ)を用いて行われていた音声放送で、上記の地上デジタルラジオのように各社(半強制的に?)参加したのですが、音楽の垂れ流しばかりで、まともな(失礼)オリジナル番組を作っていたのは文化放送のBSQR489くらいのものでした。そんなBSデジタルラジオは国の方針転換にも伴い、約5年ですべての放送が終了となりました。
 上リストに対して「BSデジタルラジオを思い出させる」と書いたのはまさにその点で、TBSの「OTTAVA」は延々とクラシックを流し、ニッポン放送の「Suono Dolce」は延々とラブソングを流しているだけです。一方の文化放送はのちに「超!A&G+」として独立チャンネルにする程度にオリジナルのアニラジを流しています。しかし、それだけではBSデジタルラジオ時代からの進歩はありません。しかし、明らかにBSデジタルラジオからは進歩していて、その最大の功績はインターネット向けに同一内容の配信を行っている点です。上記の関東AM3社の提供する地上デジタルラジオは、たとえばkikeruから聴取可能ですし、各社のサイトからも聴取可能です。どうやって権利関係をクリアしたのかは分かりませんが、とにかくクリアできるというのを明確に示してくれているのです。それでもコンテンツの不足もあいまって、まだまだ普及には程遠いと個人的には感じていました。
 そんな中始まったのが、冒頭に記した地上AMラジオをサイマルする専用チャンネルの開局です。2008年9月29日から上記のリストに加え、以下の3つのチャンネルが新設されました。

 まず第一に素晴らしいのが、クリアな音声。こんなにクリアなAMラジオが聴けるのは、有線放送(USEN)以来かと思われます。ただ現時点では特定地域のみで、日本中で聞けるわけではありません。デジタル放送なので汚い音声にはなりませんが、0と1しか存在しないので、いわゆる雑音リスナーのようなひとには聴取がまったくできません。ですので、これは有線の時のような牽引力はないと思われます。ただ個人的には、AMラジオにそのような高音質が必要なのかは、疑問を呈しておきたいです。
 そして最大に素晴らしいのが、今後予想される展開です。すなわち、他の地上デジタルラジオチャンネルがインターネットで同時配信されているわけですから、技術的・法的にはこれらAMサイマル地上デジタルラジオをインターネットに乗せることが可能と思われるのです。そうなると、夢にまで見た日本中、いや世界中でAM放送が聴取できる時代が到来するわけです。必死で雑音と戦いながら文化放送にチューニングをあわせていた貴方、部屋の中をうろうろしながらKBS京都の電波を探っていた貴方、ラジオ本体に触れていた方が感度が上がるからとラジオを抱きしめながらラジオ大阪を聞いていた貴方。ついにそんな貴方たちが救われる時代が到来しようかとしているのです。素晴らしい!
 ただ本当にそんな展開になるかは分かりません。それに現在のAMラジオのそこまでのコンテンツ力が残っているのかも疑問です。だけどラジオ局という存在は、散り散りになっているインターネットラジオとは異なる、パッケージとしての価値があります。いくら売れなくても雑誌が存在するように、ラジオ局としてパッケージされることには大きな価値があると信じています。そんなユメのような時代を妄想しながら、秋の夜長は更けていくのでありました。