Googleストリートビューはキモチワルイ。だけど今更何を言っているんだ。

 そろそろ様々な反応も出切って落ち着いてきたかな、と思いきや、まだまだアッツアツですね(笑)。先日のエントリ[id:noir_k:20080806:1217953257]で「わーい!聖地巡礼じゃーい!」と無邪気にストリートビューを紹介した以上、多少思うところがあるので書かせていただきます。
 ネット上では賛否両論のストリートビューですが(というか否が多い?)、それらの中でGoogle の中の人への手紙 [日本のストリートビューが気持ち悪いと思うワケ] - higuchi.com blogが最も真っ当にストリートビューについて語っていると思います。ここに書かれていることは、そうそう間違っていることではないと思います。そりゃ自分だってストリートビューに自分の生活範囲がいつの間にか撮影されていた気持ち悪さを感じるくらいには繊細ですから*1。ただ「僕は生理的にダメ」には納得できますが、そこから「日本の都市部の生活道路をストリートビューから外してもらえませんか」につながるのは、さっぱり理解できません。そもそも日本vs国外(アメリカ)になっているのは、ちょいとピントをはずしているとは思いますが*2
 このエントリに対するはてブを覗いていると、同意を示されている、すなわち違和感を覚えているにとどまらず、ストリートビューに反対でやめてくれという立場を取られている皆さんも少なくないようですね(笑)。個人的な感想を言わせて貰えば「ほぅ、そんなに繊細なら感情を持ち合わせているなら、よくもまあ今までのうのうと生きてこられたな」といった感じです。勿論、意図的に揶揄しています。だって、Googleストリートビューなんて、ただの画像なんですよ。別に貴方(あるいは貴方の家や車)が写っていようがいまいが、それはただの街角の背景に過ぎず、お前がここにいるぞという情報ではないんです。勿論、検索不可能ですし、顔にモザイクが入っているのだから*3よっぽど親しい人でないと分からないはずです。これに怯えるのは、よっぽど普段からやましい行動を取っているか、ナイス自意識!なだけとしか思えません。そんな繊細な自意識を持ってたら、街を歩こうにも覆面を被らなければいけなくなってしまいます。ここでざくっと論点をすり替えます(笑)。そんなことより、個人情報を撒き散らしながら生活している現状の方がよっぽど怖いことですよね!
 そこら辺の意図を込めて、はてブコメントに次のように書きました。

この程度のプライバシでガタガタ言うやつが、よくもまあネットに接続できるな。クレジットカード使えるな。以下略。

 まったくもってこの通りで、たとえば自分にとってはGoogleストリートビューなんかより、いまだにSuicaPasmoの方が恐怖です。これは情報という形で自分のいる場所が駅単位で特定でき、またその足取りなんかも簡単に追えるからです。さらには電子マネーとして使用していれば、購買履歴なぞも追えます。もちろん、誰もが簡単にアクセスできるストリートビューと異なり、特定の人しかその情報にはアクセスできないはずです。それでも、誰かがアクセスできるというのが恐怖です。仮に誰もアクセスできないにしても、その情報がこの世界のどこかにあることが恐怖です。これは今までSFの世界の話だと思っていた監視社会の実現のひとつです。だけど自分はSuicaを使っています。それは自分のプライバシを犠牲にしてでも、それ以上の恩恵がこのサービスによってもたらされると信じているからです。また社会にサービスが浸透していくことで、感覚が鈍り、自分の中のプライバシ観が変化していったというのもあります。
 貴方の手の中にあるクレジットカードは、個人情報の塊です。そこには貴方の行動が残されています。ネットは自分がIPアドレスという名前を掲げてさまよう世界です。ネット上のどこに行こうが、貴方が閲覧したという事実はデータとして残ります。Amazonを頻繁に利用する人、貴方の趣味趣向はすべてAmazonのデータベースに蓄積されています。それらの情報は誰もがアクセスできるものではありません。しかし、その情報は間違いなく存在するのです。
 初めてインターネットに接続するとき、初めてネットショッピングに手を出しクレジットカード番号を入力するとき、もの凄い不安があったはずです。だけど、人はそして社会はそのプライバシ侵害を受け入れ、利便性を追求してきました*4Googleが「勝手に」何かやらかしたのは、感情的に嫌な部分は確かにあります。しかし情報化社会の只中にいる自分たち現代人にとって、ストリートビューが出現する前から、その程度のプライバシなんかそもそもなかったはずです。
 だから自分は言いたい。確かにストリートビューはキモチワルイ。だけど今更何言っているんだ、と。

追加:ちょっとだけ。id:kanedayuu:20080810:1218375001さんに応えて。

だからアニメイトとかそういう店に入っていくところがネットに上がったら嫌だ。そうなった場合多くの人には通行人Aかもしれないけど、俺を知ってる人が俺を見つけるかもしれない。それが怖い。

 実際にその場を発見されるのと、Googleストリートビューを通して発見されるのに本質的な違いがあるのでしょうか。確かにストリートビューは発見の機会を拡大しています。だけどリアルに発見されたら「運が悪かった」で済むでしょう。同じようにストリートビューに対しても「運が悪かった」で済まないですかね。だけどこの議論が不毛(というと失礼なのですが、あまり本質的でない)で、あくまでもストリートビューは「ストリート」を写すのであって、そもそもそこに人間が写りこんでしまうのはできるだけ避けたいはずです(勿論、肖像権がありますから)。だからこそ入り込んでしまった人物にはちゃんとモザイクをかけるし、すべてのストリートビューを見たわけではないですが、早朝?などの人気の少ない時間に撮影する*5などの対策を取っているのだと思います。

*1:ちなみに「気持ち悪さ」に関する自分の意見はid:guri_2:20080810:1218347596さんやストリートビューの問題はGoogleの問題ではない - Weep for meさんとほぼ同じです。

*2:アメリカだって気になる人は気になるよ!アメリカ人だって人間ですから。その感覚は文化の違いで片付けられるものではないと思います。

*3:これが完全でないのは確かに問題ですが、これはまた違った類の問題です。

*4:もし一点だけストリートビューについて意見するなら、この「利便性」が良く分からないところでしょうか。

*5:例えば、ご心配されている地点の例として秋葉原中央通りを見てみると、まだ多くの店は開店前だったりします。ぎりぎりとらのあなが開店しているように見えるので10:00過ぎくらいでしょうか。