戦略と戦術の違い、分かりますか?

 戦略(strategy)と戦術(tactics)という2つの言葉があります。どっちもどっちな感じで、あまり一般的とはいえない用語かもしれません。ビジネスの分野では戦略という言葉が飛び交っているようですし、『タクティカルロア』なんていうアニメもあります。しかし、ゲームの分野においては、ウォーシミュレーションを戦略シミュレーションとも言いますが、一方でタクティカル(=戦術)RPGなどと呼称することもあります。『大戦略』と『タクティクウスオウガ』、じゃあ元祖『信長の野望』は戦略or戦術シミュレーション?ノンノン、『信長の野望』は歴史シミュレーション。うーん、混同されてますねえ。
 この2つの用語、貴方はしっかりと使い分けができているでしょうか?
 戦略と戦術のちゃんとした意味が知りたいひとは、お手元のネットの海にぷかぷか浮かんでいる広辞苑を開くか、wikipedia:戦術wikipedia:戦略を参照してください。ちなみに我らがgoogle先生によると、戦略は約31,500,000件、戦術は約17,800,000件ということで、戦略がほぼダブルスコアを記録しています。戦略の方がちょっと格好良い響きなのでしょうか。分かりません。
 字面からも分かる通り、元来は軍事用語でした。戦略とは戦場に部隊を送り込むまでの段階における方針、戦術とは戦場でどのように部隊を運用するかの方針と分けられていたようです(はてなキーワード参照)。つまり、戦争しよっかなー、どうしよっかなーというのが戦略。戦場にて、このまま戦おっかなー、逃げよっかなーというのが戦術。ということでしょうか。経営戦略、外交戦略、牛歩戦術みたいな言葉は、ここから転じて利用されているわけです。
 例えば、国会における投票で時間稼ぎをしたいという戦略のもとでは、様々な戦術が考えられます。一番有名なものが上記した牛歩戦術ですが、例えばチョンマゲ先生こと松浪健四郎*1のように水をかけたりして騒ぎを起こすことも可能でしょう。あまり良い例ではありませんが、そのような具体的な手段が戦術に相当します。ちなみに、少し脱線するのですが、牛歩戦術には3つの狙いがあるそうです。その中の面白いもの1つをwikipedia:牛歩戦術から紹介します。

時間稼ぎをすることで、トイレが我慢できずに、投票前に議場を後にする賛成派議員が増える。議場を一度出てしまうと、その議会が終了するまで議場に入れないというルールがあるので、結果として賛成票を削ることができる。最近、牛歩戦術が減ったのは、成人用紙おむつが普及したから。

 閑話休題
 現代における一般的な認識では、戦略が戦術の上位概念という感じだと思います。つまり、戦略は目的みたいなもので抽象的であり、戦術は手段みたいなもので具体的だと思われます。
 そこで思い出したのが、任天堂岩田聡社長が講演されていた*2内容でした。記憶を頼りに、少しだけ書きます。内容はニンテンドーDSWiiで展開されている「Touch! Generations」周辺に関する説明です。

任天堂は時代に合わせて柔軟に変化していかなくてはいけない。
そこには確固たる戦略と、戦術がある。
戦略は方向を決めることであり、戦術はそのための具体的な手段である。
環境が変われば、戦術は変わる。

任天堂の戦略は、ひとりでも多くのひとを笑顔にすることである。
つまり、ゲーム人口を拡大する必要がある。
そのために、ゲームの定義を拡大することにした。
これが任天堂の戦略である。
具体的な戦術は環境に合わせて変化する。
だけど、戦略は変化しない。してはいけない。

 この講演を聞いて、感銘を受けたとまでは言いませんが、良い講演だったなぁと素直に思えました。なんかものすごく当たり前のことを言っているようですが、意外に難しいことだと思います。ぶっちゃけて言えば「軸をぶらすな!」ってことなんでしょうが。『脳を鍛える大人のDSトレーニング』とか『nintendogs』を頭ごなしに批判する暇があったら、何はともあれものすごい数のハードを売り上げている任天堂の戦略性の高さを考えて欲しいと思いました。

*1:自分はこの名前を目にするたびに、いつも高浪敬太郎さんのことを思い出してしまいます。ちなみに高浪敬太郎さんはミュージシャンで、初期ピチカート・ファイヴのメンバーで、自分的にはアニメ『ちょびっツ』の劇伴を担当したことでお馴染みになっています。『ホームシック・ブルース』(ピチカート・ファイヴ『女王陛下のピチカート・ファイヴ』収録)なんか、いかにも高浪敬太郎らしくて素晴らしいので、機会があったら是非聞いてみてください。

*2:ちなみに会社説明会でのことです。社長自ら出てくるところに感心するとともに、岩田社長の講演を聞いたのはそれが2回目のことでしたが、相変わらず素晴らしい講演内容でした。就職活動中の良かった思い出のひとつです。