「負けない」評論とちょっとおセンチな秋の夜長

 久しぶりの更新になってしまい、申し訳ありません。時期的に考えれば分かるように、帰宅するなり『クイズマジックアカデミーDS』に興じていたというのが表向けの原因です。お恥ずかしい限りです。このゲームは面白いですねー。ここまでwifiのありがたさを実感できるソフトも珍しいものです。アーケード版は金食い虫だからって敬遠していたけれど、DS版だって金はかからなくても時間食い虫だなあ。諸事情で名前は明かせないのですが、「魁やまブき高校」って学校名でやってますので、もし見かけたらフッとほくそえんでみてください。
 その間に色々考えるところがあって、自分が何をやって、何を書いているのか見失いそうにもなっていました。まあ、秋なので少々センチメンタルなわけです(笑)。その中で徐々に読み進めつつある『ファウスト』Vol.7ですが、創作以外は殆ど目を通せました。興味深かったのが竜騎士07の5万字インタビュー(太田克史との対談だろ!ってツッコミは野暮です)。とにかく量的にも凄いのですが、実際は3回分のインタビューが載っているわけで、要するにVol.6から2年半も経ってしまったからこのような量になっただけとも言えます。それでも時系列に沿ったそれらのインタビューを見ていると、なかなかに面白い。その中で特に気になった部分をP.672から一部引用します。

どうもね、今の若い人たちには「自分がすごく楽しみにしていたものに裏切られるとカッコ悪い」っていう風潮があるらしいんですよ。現代は空前のネット時代、記録社会で、発売前の感想も発売後の感想も全てが記録に残る時代ですよね。だから後で揚げ足を取られてもカッコ悪くない批評を残しておこうというのが最近の風潮で、今、発売前の作品に胸をときめかせて期待する批評をネットで書いている人なんてのはごくわずかなんじゃないかな。
(中略)
いつからか感想文っていうのは諦め文調でやるのがいいんだ、っていうムードが出てきたと思う。だから「読み物」という見地からすると、すごく批評がつまらないなーと思う時代になった気がしています。

 最新作『うみねこのなく頃に』EP1発売前後のネット上の反応に対する竜騎士07の率直な気持ちのように思われます。こんな短い引用でも色々と突っ込みたいところもあるのですが(例えば「評論」という単語の使用法であったり)、されているようであまりされていないタイプの指摘だと感じました。「後で揚げ足を取られてもカッコ悪くない」というのは、確かにネット上で何らかの発言をする際の最重要項目のひとつかもしれません。それは、例えばこのはてダのようにハンドルネームでありながらも一応個人を主張して書かれているような多くのブログでは当然のことであり、また匿名での掲示板発言でも同様ではないかと思います。それはただの自意識の問題のようでもありますが、そのような発言の先には(実際にいるかいないかは別問題として)確実に読者という第3者が存在するという事実が大きいです。そのような振る舞いは社会的であり、意図の有無に関わらず情報を発信するものとして何らかの責任を果たそうとしている態度だとも感じます。
 自分の内に秘めている思考には、論理的整合性もままならないものも少なくありません。そのような薄らぼんやり曖昧模糊とした思考であっても、それを直接吐き出すことに価値があることもあるはずです。それは例えば飲み会の場でなら放言できるかもしれません。しかし明文化しネット上などで発表するのは恐怖です。このはてダを始めた時に「今まで避けてきた直截的な主張を少しずつでもしていこうかな」なんて書いたのですが、実際にはなかなか難しい。自分が無駄に大人になってしまったのか、別段圧力がかかっているわけでもないのに思っていること、感じていることを直截的に発信するのは躊躇われるのです。
 率直な意見というものは、えてして暴論になりがちです。そういうことを理解しているから、それなりの論理的整合性を保った文章を書こうと人は努力するのです。他者に納得させ、理解させるというのが最終目的であるならば、そこでは「勝てる評論」が必要とされるでしょう。しかし「勝てる評論」をやり遂げる体力や覚悟がないのであれば、必然的に「負けない評論」をせざるを得ないと思われます。ここで「勝てる評論」とは攻守ともに優れたな評論であり、「負けない評論」とは攻撃力は低いものの相手に付け入る(=突っ込まれる)隙を与えないという高い防御力を持っている評論を想定します。あ、ちなみに自分語です。あしからず。
 実際的には、この引用元である竜騎士07の発言もそうなのですが、攻撃力は高いが防御の甘いものが多いと感じます。それは竜騎士07のみならず、最近ここで触れた人物では宇野常寛などもそうだと思います。しかしそういう評論ほど面白いと感じます。
 ブログなんかも同じだと思っていて、「負けない」だけの雑文はフラットで面白くないと思います。それよりは多少粗があっても刺激的な視点を提示しているものの方が、自分にとっては面白いです。新たな視点を獲得してくことができるのが、他者のブログを読む楽しみです。だからこそ、自分も多少粗があってもポンポン出せていけたら良いなあと思っています。が、それがなかなか難しいんだよねー。もっと責任感のハードルを下げて良いと、頭では分かっているつもりなんですけどね。これはおそらく、すべてのブログ書きに共通のジレンマかもしれませんね。
 ちなみに『ひだまりスケッチ』関係ではいくつか言いたいことがあるのですが、うまくまとまらないんです。本エントリもなかなかまとまりませんでしたし、現段階でもあまりまとまっていませんが、こういう内容ですから思い切ってアップしました。ごめんなさい。『ひだスケ』だと、原作版における「5コマ目としてのタイトルの重要性」や、アニメ版の「擬似家族の中に血縁家族を持ち込むという意味」「アニメの中の実写はアニメというパラドックス」なんかが気になる項目です。そのうち書くかも。まあ、秋の夜長のグダグダ思考です。しかも、少々おセンチな(笑)。
 余談ですが小説版『ストライクウィッチーズ スオムスいらん子中隊シリーズ』を読みました。アニメ版とは一味違う面白さがそこにはあります。これでまんが版と合わせて「パンツ応募券」が4枚(2口分)溜まったのですが、どの商品で応募しようか悩みます。それにしても昨年放送の『BLUE DROP』およびそのまんが版といい、最近の自分は百合ものに縁があるのが気になりますな。