架空キャラクタパーソナリティとラジオドラマ『KONAMI STATION』開局によせて

 2008年8月27日よりコナミインターネットラジオサイト『KONAMI STATION』(http://573st.i-revo.jp/)がi-revoで開局されました。コナミは日本におけるインターネットラジオの先駆者とも言える存在で、この前身として1997年3月17日〜2007年9月30日まで運営されていた『db-FM』は、おそらく日本最古インターネットラジオサイトではないかと思います*1。明言はされていませんが、『KONAMI STATION』もまた『db-FM』の後継として存在していると解釈してよいでしょう。そしてその内容からはなかなか興味深い点が散見されます。

KONAMI STATION』初期ラインナップから見るコナミアニラジ戦略

 そんな『KONAMI STATION』の初期ラインナップは以下のようになっています。

 計8番組ですが、これらは2つに大別できます。
 まず『藤田咲の音がナル箱庭 WEB』と『小林ゆうの小林文明 拡大版』はサブタイトルから分かる通り、すでに存在するラジオ番組のWEB版です。ぶっちゃけてしまえばラインナップを充実させるための水増しみたいなものです。ただ元番組そのままでなく、拡大版という形でネットオリジナルにしてくるところは好感が持てます。ちなみに『藤田咲の音がナル箱庭』は地上波文化放送アニスパ!』内の箱番組、『小林ゆうの小林文明』は同じく文化放送白石涼子の聞かなきゃ☆そん♪Song!』内の箱番組です。またタイトルから分かる通り、タイアップラジオではなく、パーソナリティに焦点を当てたラジオ番組になっています。以前のエントリid:noir_k:20080619:1213838915の分類でいけば、1998年以降のコナミの方針に近い番組になっていると言えるでしょう。
 一方、上記2番組以外の6番組はすべてタイアップ番組になっています。『ラジオ幻想水滸伝』は『幻想水滸伝』、『ときめきメモリアルGirl's Station』は『ときめきメモリアルGirl's Side』、『悪魔城ドラキュラ ラジオクロニクル』は『悪魔城ドラキュラ』、『Radio QMA!!』は『クイズマジックアカデミー』のタイアップです。さらに『悠久の学び舎Radio』はこのための(?)オリジナルコンテンツ『悠久の学び舎』のタイアップであり、『ときメモ!ラジオ』も派生コンテンツですがこのためのオリジナルになっています。さらに特徴的なのが、これら6番組はすべて番組中でオリジナルのラジオドラマを内含しているという点です。そのようなラジオドラマ+トークという懐かしい昔ながらのアニラジフォーマットと自分は久し振りに出会いました。

地上波ラジオから姿を消したコンテンツタイアップアニラジ

 いま「昔ながらのアニラジフォーマット」と書きましたが、これが崩れたのは一体いつ頃からだったでしょうか。そもそもいわゆるアニラジはその多くがタイアップ番組として存在していました。つまり声優自体をラジオパーソナリティとして受け入れているのではなく、あくまでもタイアップコンテンツが主であり従として声優が存在するという形式でした。例えば、あまり古いものではありませんが、声優パーソナリティラジオとしての側面が強い『緒方恵美の銀河にほえろ!』(1996〜1998年)ですらその正式タイトルは『メルティランサー緒方恵美の銀河にほえろ!』であり、ゲームソフト『メルティランサー』のタイアップ番組として、番組中でラジオドラマが放送されていたくらいです。
 そのような現象の分かりやすい事例があって、それはアニラジ帯番組として存在したTBSラジオ『ファンタジーワールド』(1995〜1997年)とTOKYO FMKADOKAWA電波マガジン』(1997〜1999年)です。ともにメインスポンサは角川書店でした。これらを比較すると、特定コンテンツタイアップ番組*3の困難さが分かります。
 ラインナップ詳細はWikipediaの該当項目を見ていただきたいのですが、『ファンタジーワールド』時代は『センチメンタルグラフティ』、『フォーチュンクエスト』、『卒業』、『卒業M』、『LUBNERシルバースターストーリー』、『聖痕のジョカ*4』、『CLAMP学園探偵団』、『セイバーマリオネットJ*5』、『MAZE爆熱時空』、『魔法少女プリティサミー』、『神秘の世界エルハザード』……とそうそうたるコンテンツタイアップ番組が存在していました。一方でメディアタイアップ番組*6としては『声優グランプリ』、『Tokyo Walker』、『Game Walker』、『Aska』、『ドラゴンマガジン』……とこちらも豊富に存在します。しかし、さらに時の進んだ『KADOKAWA電波マガジン』時代になるとコンテンツタイアップ番組は見当たらず、メディアタイアップのみになってしまいました。
 そこにはいくつかの原因があります。例えば本来メジャーメディアであったラジオ深夜枠自体が衰退したという状況もあります。またコンテンツタイアップアニラジの主眼が新規客層の開拓にあるのか、それともファンの固定化にあるのか、といった違いもあります。またアニメタイアップの場合、1クール刻みの放送期間や莫大なコストが問題なのかもしれません。いずれにせよ、コンテンツタイアップ番組は1997〜1998年を前後して、地上波ラジオから撤退していきました*7

ネットラジオへの移行と『db-FM』『KONAMI STATION』

 ではコンテンツタイアップ番組はどこに行ったのか。それは勿論、ネットラジオに移行、展開していったのです。しかもネットラジオの自由さおよび法律&JASRACのうんたらかんたらからか、コンテンツタイアップでありながらそのタイアップ成分は宣伝コーナのみに集約され、一般的なパーソナリティ指向番組に内実を変えていきました。その詳細についてはいつか書くと思うので本エントリでは省略しますが、おそらくその第一人者がコナミであり『db-FM』であったのは間違いないと思っています。その『db-FM』が2007年で閉局したのは、ひとつの時代の終わりを象徴していました。以前のエントリid:noir_k:20080619:1213838915で指摘したことですが、コナミの戦略はコンテンツタイアップから所属アーティストに焦点を当てたパーソナリティ指向番組に移行していきました。しかし本来ゲーム会社というコンテンツホルダであるコナミにこの戦略は当然馴染まず、結局『db-FM』は長きに渡り、『田村ゆかり黒うさぎの小部屋』、『長沢ゆりかのハートフルカフェ』などで「お茶を濁す」(失礼)結果になってしまったのです。
 今回の『KONAMI STATION』開局にあたり、そのラインナップは再びコンテンツ指向*8に回帰していました。いわばアニラジの原点に回帰しようとしています。その善悪は分かりませんが、少なくともコンテンツホルダたるコナミの戦略として間違っていないと思われます。

シャロンとユリのRadio QMA!!』に注目だ!

 そんな『KONAMI STATION』初期ラインナップの中での注目すべきポイントは『シャロンとユリのRadio QMA!!』です。これはパーソナリティが浅野真澄広橋涼という点でも勿論大注目でもあるのですが、見るべきところはそこではありません。ずばりタイトルです。「シャロンとユリの」の部分です。これは最近めっきり見なくなった架空キャラクタパーソナリティの体をなしているのです。この番組においてはタイトルだけで、内容では一切関係ないですが(笑)。このような手法は最近では『ラジオツインエンジェル 聖チェリーヌ学院お昼の校内放送『えんじぇるタイム』』(水無月遥CV田村ゆかり、神無月葵CV能登麻美子)などがありますが、これは殆どラジオ番組を模したラジオドラマに過ぎません。過去に遡るとコナミ提供の『ソフィアの純愛』(ソフィアCV小西寛子)があります。この番組はかなり異質で、詳細はググってみると分かると思います。個人的に近さを感じるのは『潮崎渚の夢で逢えたら』(金月真美)でしょうかね。このようなタイトルの名付け方ひとつ取ってみても、コナミが方向転換を図ろうとしているのが透けてきます。
 というわけで、今後も『KONAMI STATION』に大注目なのです。

戯言

 一方でネットラジオでラジオドラマを流すのはどうなんだろう、と思う自分もいます。デフォルトの聴取法でシークバーをパチンと叩けば飛ばされてしまうわけですからねえ。そういう意味では、ネットラジオは本質的には宣伝番組に向いていないのかもしれません。『ギョーカイ時事放談』で一時期話題になっていましたが、宣伝コーナーをコーナーとしてまとめてしまうことのデメリットがこういうところにあります。ならば全面的に宣伝を散らばらせれば良いのですが、そんな宣伝臭い番組は聴きたくないし作りたくないというジレンマ。ラジオ業界は地上波、ネットを問わず、比較的楽しんで作っているような雰囲気がありますので、宣伝はあくまでも資本を騙くらかすための方法に過ぎない、と割り切って好きな番組を作るのが一番なのかもしれませんね。いずれにせよ、一視聴者としては楽しい番組が聴ければ結構です。それ以上の幸せはありません。

*1:いつものことだけど、調べてないよ。後で調べるかもね。

*2:1,2回目は中村悠一小西克幸。3,4回目は鈴村健一、小田久史。

*3:うまく表現できませんが、要するにある特定の作品のタイアップという意。

*4:というか、正式には大塚英志白倉由美系。マダラプロジェクトです。

*5:ちなみに自分が始めてアニラジを意識して聴取していた番組がこの『咲かせるぜ!度胸花』でした。

*6:これは特定コンテンツではなく、雑誌等のメディアとの連動番組という意です。分かりにくくてすみません。

*7:と断言するのは嘘になります(笑)。嘘も方便ってやつです。現在でも『テニスの王子様』なんかはあります。こんな風に脚注で言い訳をする小賢しさが、ちょっと嫌になります。

*8:と書くとコミュニケーション指向の対概念のような誤解を受けそうですが、ここではコンテンツタイアップという程度の意味です。