『428〜封鎖された渋谷で〜』発売記念、おすすめの「グランドホテル形式」物語たち

 さて2008年12月4日、セガチュンソフトによるWiiサウンドノベルゲーム『428〜封鎖された渋谷で〜』が発売されました!拍手!……実はまだ購入していないという不信心者で申し訳ないのですが。だって、Wii持ってないんだもん!パンツじゃないから恥(以下略)。
 この作品、タイトルである『428』*1=渋谷が象徴しているように、1998年の『街〜運命の交差点〜*2の正統続編のような位置づけにあると考えられます(まだ未プレイなので、本当にそうなっているのかどうかは分かりませんが)。謎の『ファミ通』クロスレビュー満点という良いんだか悪いんだかよく分からない話題もありましたが(笑)。しかし、いまだプレイできていない自分ではありますが、せっかくなので『428』そして『街』のような、いわゆる「グランドホテル形式」と呼ばれる群像劇に着目してみようと思います。……本エントリは長くなりそうなので、サクサク行くよ!

まず「グランドホテル形式」とは

 Wikipedia該当項目から引用させていただきますと、「同一時間および同一の場所に集まった複数の人物の行動などを、同時進行的に一度に描く作品の手法」と表現されています。これはもともと、1932年のエドマンド・グールディング監督によるアメリカ映画『グランドホテル』に端を発しており、そこで採用されている類の作劇手法をこのように呼称するようになったようです。
 本エントリでは、その代表格ともいえるゲーム『街〜運命の交差点〜』をはじめ、自分のおすすめする「グランドホテル形式」の物語を紹介したいと思います。特に日本製のもので、異なった物語メディアのものを紹介しようと思います。

ゲーム『街〜運命の交差点〜』(1998年、チュンソフト

爆弾魔を追うオタク刑事、意中の女性にプロポーズを挑もうとする元ヤクザ、日本に帰国したばかりの傭兵、ノイローゼに悩まされる作家、謎の組織の元で他人を脅迫し続ける大学生……。渋谷を舞台に運命と運命が交差する!




 もうこのエントリ中で何回も名前が出てきているこのタイトル。このゲームは、いわゆる「サウンドノベル」(これはチュンソフトのテキストアドベンチャーに付けられるジャンル名で、背景画像の上に文章が表示され、時折提示される選択肢によってインタラクティブに物語が進行していくというゲームスタイル)です。本作では「ザッピング」というシステムで、視点キャラクタを変えながら、すべての主人公をハッピーエンドに導くゲームになっています。
 本作では8人の主人公、8本のメインシナリオが、5日間にわたる渋谷の「街」を舞台に交錯します。「人生において自分が主人公であり、他者の人生において自分は登場人物のひとりにしか過ぎない」というあまりにも当然な発想のもとで、あるキャラクタのストーリー進行を他のキャラクタの行為で介入していく気持ち良さがこのゲームにはあります。渋谷駅前のスクランブル交差点ですれ違う100人のキャラクタ(=人間)には100個の異なったストーリー(=人生)があるのです。その一部をゲームを通じて垣間見ながら、その根底には「渋谷」という「街」がどっしりと存在していることに気が付かされます。そしてラストには……。同じものを見ても、見る人が異なれば、感じることも異なるのです。
 本作はゲームにしては珍しく、キャラクタの存在感の観点から、実写が採用されています。「実写ゲームは売れない」という法則を崩すことはできませんでしたが(笑)、大変素晴らしい作品で超オススメです。PSP版も出ていますよ。……自分はPSPも持っていないけどさ(涙)。

映画『THE 有頂天ホテル』(2006年、三谷幸喜監督)

晦日でてんやわんやの高級ホテル「アバンティ」。分かれた元妻と唐突に再会した副支配人、汚職事件でマスコミから逃げてきた悪質代議士、そしてその元愛人の客室係、夢破れたベルボーイ、死にたがる大物演歌歌手、ホテル内で迷子になる総支配人……。無事、ホテルは新年を迎えられるのか?



 ここで本来ならば、「グランドホテル形式」の原点たる『グランド・ホテル』を紹介するべきなのかもしれませんが、国産限定ということで。本作は公開当時、方々で監督である三谷幸喜自身が語っていたように、『グランドホテル』を強く意識した作品になっています。例えば、本作の舞台となっているホテル「アバンティ」のスィートルームの名前が『グランドホテル』キャストの名前になっていたり、作中でも『グランドホテル』に対する言及があったように記憶しています。
 1つ目の『街』のように明確な主人公の数、ストーリーの数は断定できませんが、20人以上、6つ以上のメインストーリー(かなり適当な数字で申し訳ありません)が、大晦日の夜10時から新年を迎えるまでの2時間のあいだに(リアルタイムに)展開されます。舞台がホテルということで、密室劇としての趣もあります。三谷幸喜らしい、細かいところまで行き届いたキャラクタ造詣が素晴らしいです。そんなキャラクタたちはホテルという「場所」、そしていくつかの重要なアイテムによってつながっていき、ラストではそろって新年を迎えます。
 ……ただ、本音を言うと、自分は『ラヂオの時間』の方が好きです(笑)。その判断に、この作品における欠点が隠れていると考えています。

小説『ドミノ』(2001年、恩田陸

一億円の契約書を待つ生命保険会社からお菓子の買出しに出てきたOL、オーディションを受けに来た子役とその母親、推理力を競い合うミステリ研の大学生、別れを画策する青年実業家、俳句会の待ち合わせをする老人、訪日中のホラー映画監督……。昼下がりの東京駅で「ドミノ」が音を立てて倒れ始める!



 本作の舞台は実在の東京駅。巻頭には地図まで付いています。そこで繰り広げられるのは、10人以上のキャラクター、5つ以上のストーリー(ごめんなさい。今手元に本がないので、記憶に頼っています)。『ドミノ』というタイトルから分かるように、「取り違えられた荷物」という起爆剤から様々な人々、物事があたかもドミノ倒しのように連鎖していきます。小説の特性からでしょうか、物語の収束のさせ方がすごくうまかった印象があります。あまり書くとネタバレになりそうなのですが、本作は「場所」の影響力が上で紹介した作品に比較すると弱く、代わりにメインとなるストーリーの求心力が強くなっています。
 正直、恩田陸という作家は優れていると思いますが、個人的には手放しで評価はできないと考えています。そんな中で、本作に関しては最高!の一言です。テキストのみの小説ですから*3、キャラクタの書き分けに不安を覚える方もいるかもしれませんが、恩田陸の筆致による生き生きとしたキャラクタ描写は無問題。ジェットコースタームービーのような爽快感すら味わえる、良質のエンタテインメント作品に仕上がっています。

アニメ『BACCANO!−バッカーノ!−』(2007年、大森貴弘監督)

若きマフィアの幹部と多くのマフィアたち、コスプレ強盗カップル、リーダー奪還を企てるテロリスト、快楽殺人鬼、顔に刺青の入った不良少年、事件を調査する新聞社の人間、行方不明の兄を探す富豪の娘、はては錬金術師やら伝説の幽霊「レイルトレーサー」やら伝説の殺し屋やら……。謎が謎を呼ぶ群像活劇!ヒャッハァ!



 原作は成田良悟によるライトノベル(2003年〜、電撃文庫)。舞台は1930年代、禁酒法時代のアメリカ。テレビアニメ版では1930年のニューヨーク、1931年の大陸横断鉄道「フライング・プッシーフット号」、1932年のニューヨーク、そして1711年の大西洋航海中の客船「アドウェナ・アウィス号」を舞台に、30人以上のキャラクターたちがバッカーノ=馬鹿騒ぎ(イタリア語)を繰り広げます。鍵になるのは、飲むと不死になるという「不死の酒」。時間、場所が異なる4つの舞台で、様々なキャラクタの視点から、それぞれのキャラクタの物語が螺旋のように絡み合います。
 物語の中心に来るのは1931年の「フライング・プッシーフット号」のトレインジャック事件。そこに偶然乗り合わせた人々、錯綜する策謀、過去そして未来との因果、謎めいたキャラクタたち……。1話の中で時間、場所、そして視点キャラクタがどんどん変わるのは一筋縄ではいきませんが、画面をじっと凝視して物語世界に浸りましょう。原作である小説版も素晴らしい出来ですが、このアニメ版も2007年個人的アニメランキングの3本の指には必ず入る大傑作です。

まとめ

 とまあ、4ジャンル4作品を紹介しました。なぜか「まんが」がありませんが、単に適切な作品が思い浮かばなかっただけです。上では結構意図的に書いたつもりなのですが、「グランドホテル形式」において主役は「場所」なのだと思います。これは物語とのそこまで強固な関連性が必要と言いたいわけではないのですが、最終的に物語の雰囲気を決定するのが、この「場所」だと思うのです。
 あと大事なのは、ラストで物語をどのように収束させるか、という点。上で紹介したものは「時間制限」ものが多いのですが、キャラクタたちがラストに味わう、場所に束縛された共通体験がどのようなものかによって、作品の印象が大きく変わります。散漫な小さな物語がゆるくつながっている『街』のような作品から、すべてがひとつに収束していく『ドミノ』のような作品まで、様々な面白さがあると思います。
 「グランドホテル形式」の楽しさは、個々の魅力的なキャラクタ造詣はもとより、絡み合う人物関係&ストーリー。皆さんも、おすすめの「グランホテル形式」の作品がありましたら、是非教えていただけると幸いです。

*1:ちなみに「よんにいはち」が正式な読みらしいです。個人的には「よんにっぱ」と呼んでいますが。

*2:ちなみにセガサターン版の正式タイトルは『街』だけで、サブタイトルは付いていませんでした。

*3:実はハードカヴァー版には、少しだけですが、キャラクタのイラストが付いています。これはなかなか興味深いポイントですが、長くなるので今回は省略。

『ケメコデラックス!』および水島努過去作品のEDクレジットにおける「遊び」

 今期のTVアニメではイチオシでありながら、なかなか書きにくいのが水島務監督『ケメコデラックス!』であります。というのも、単純なようで複雑な作品とでも称せばよいのでしょうか、なかなか語りにくい作品だと実感しているからです。例えば、キャラクタ配置の面白さとか、無表情キャラの極地としてのケメコとか、水島努は相変わらず萌え=エロと勘違いしていて最高だぜ!とかあるのですが、どうにもこうにも難しい。無表情キャラをネタに、視覚情報より聴覚情報の方が優先されるのだ!みたいな話を書こうと思っていたのですが、この優先順って個体差もあるし時と場合にも依存するはず。うーん、難しい。
 ま、そんな愚痴めいたことを言っていても仕方がないので、とりあえず目先のネタを追ってみます。というわけで、本エントリではケメコデラックス!』EDクレジットにおける「遊び」についてまとめ、さらには水島努の過去作品にまで遡り、最終的には「キュー・テック板倉玄とは何者なのか?」という、いささか大仰過ぎるテーマに結び付けたいと思っております。
 ……先に記しておきますが、まだ第8話という中途半端な時期にこのようなエントリを書くのは、先出しジャンケンのようで申し訳ないのですが、色々と発見があったので書かせていただきます。というわけで、以下本題。

ケメコデラックス!』EDクレジットにおける「遊び」

 まずは基本情報です。『ケメコデラックス!』は現在絶賛放送中のTVアニメでして、なかなかイカした&イカれた内容で、自分を含むダメ人間を心の底から楽しませてくれています。その監督を務めているのが水島努です。この事実は後で重要になってくるので、心のどこかにとどめておいてください。『ケメコデラックス!』的に言えば「はーい、今noir_k先生いいこと言ったぞー。メモっとけー」(CV千葉紗子)という感じですかね。
 で『ケメコデラックス!』EDクレジットにおける「遊び」ですが、まずはid:shikifuneosamuさんのエントリを見てください。

 さて、第7話のEDクレジットを観ていて、自分を含む多くの人が気づいたと思われるのですが、「ビデオ編集」でクレジットされている名前がおかしなことになっていました。

※TVアニメ『ケメコデラックス!』第7話EDより。
 文字化けかよっ!と突っ込みたいところですが、よくよく見ればギャル文字。へえ、と思っていたら、第8話ではもはや文字ではないという境地にまで達してしまいました。

※TVアニメ『ケメコデラックス!』第8話EDより。
 暗号かよっ!と突っ込みたいところですが、その答えにはすぐに気が付きました(この謎の答えは下表で)。で、第1話からEDクレジットを見直した結果、id:shikifuneosamuさんが指摘されているように、「ビデオ編集」クレジットが毎回変わっていることに気が付きました(……やられたぜ)。ちなみにid:shikifuneosamuさんのまとめでは第4話が間違っていますので、誠に勝手ですが訂正させていただきます。すでに訂正されています。

話数 表記 備考
第1話 板倉ゲン
藤原エリカ
名前を片仮名に。
第2話 いたくら玄
ふじわら英理花
苗字を平仮名に。
第3話 G・板倉
E・藤原
名前を頭文字にして、外国人風に。
第4話 坂倉 玄
藤腹英理花
苗字を誤字に。板⇒坂、原⇒腹。
第5話 いたく L@ げん
ふじわ R@ えりか
L⇔Rっぽくて、ちょっと格好良い?
第6話 イタクラゲン
フジワラエリカ
全部片仮名に。
第7話 レヽナニ<5 レ†”ω
、ζ,ι”ヮ5 ヱL|カゝ
ギャル文字。Wikipedia「ギャル文字」を参考。
第8話 「Wingdings」フォントで「ITAKURA GEN」「FUJIWARA ERIKA」。
第9話 んげらくたい
かりえらわじふ
平仮名で、逆さから。
第10話 板倉 玄
藤原英理花
あれっ?本名がちゃんと書かれてる。
第11話 痛苦羅 厳
腐死我裸餌璃華
暴走族風当て字。よかったー、普通じゃなくなって。
第12話 板倉英理花
藤原 玄
あやうく見逃しそうになりましたが、苗字と名前が入れ替わってます。

※ちなみに正しくは板倉玄、藤原英理花さん(キュー・テック)です。

 この表は随時更新していく予定です更新完了しました。さあさ、どこまで暴走するのでしょうか。楽しみです。

補足:「ビデオ編集」ってどんな仕事?

 ところで「ビデオ編集」って、どんな仕事なのでしょうか。下にアニメ(特に現在一般的になっているデジタルアニメ)の制作フローをまとめてみました。ちなみに自分は一ファンにすぎないので、間違っている恐れがあります。基本的にはDAM(デジタルアニメマニュアル)用語集を参考にさせていただきました。

  • CT(カッティング):映像を尺に合わせて編集する作業
  • AR(アフレコ):映像に合わせて声(セリフ)を録音していく作業
  • DB(ダビング):セリフ、効果音、音楽などの音響素材を1つにまとめる作業
  • V編(ビデオ編集):映像、音を1本にまとめ、納品出来る形にする作業

 大体お分かりになりましたか?簡単に言うと、ばらばらの音と映像を1枚のDVDにする、という感じでしょうか。この作業で、テロップ入れや一部の映像加工(フィルター掛けなど)が行われるそうです。もう少し具体的なビデオ編集の仕事は山手実(キュー・テック)インタビューに詳しいです。

水島努過去作品のEDクレジットにおける「遊び」

 閑話休題。というわけで、『ケメコデラックス!』におけるEDクレジットの「遊び」ですが、なぜ「ビデオ編集」の板倉玄&藤原英理花だけがいじられているのか、という疑問が残ります。そのとき、EDクレジットの「遊び」ということで思い出したのが、『ケメコデラックス!』と同じ水島努監督によるOVA撲殺天使ドクロちゃん』でした。

水島努の過去作品

 先に水島努監督についてあまり知らない方のために、少しばかり説明させていただきます。水島努は、かつてはシンエイ動画に所属し、『クレヨンしんちゃん』や『ジャングルはいつもハレのちグゥ』で活躍していました。その後フリーになってからは『撲殺天使ドクロちゃん』や『大魔法峠』といったイカれた作品から、『xxxHOLiC』や『おおきく振りかぶって』というマトモな作品までこなす、現代を代表する人気アニメ監督のひとりです。特に『撲殺天使ドクロちゃん』『大魔法峠』という2作品は、ジェネオン エンタテインメント川瀬浩平P(通称「偽まる」)つながり*1ということで、本作『ケメコデラックス!』と大きな関係があります。年代順に並べると、次のようになります。

 今回、これらのEDクレジットを見直してみると、面白い発見がありました。

撲殺天使ドクロちゃん』(2005年)における「遊び」

 前述した『撲殺天使ドクロちゃん』のEDクレジットですが、これはWikipediaに掲載されているくらい有名な話でして、その内容は、全4巻で計4パターンあるEDクレジットに、それぞれ異なった追加情報が記述されているというものです(正確には第1巻はノーマルで、第2巻以降に追加情報が付与されています)。

OVA撲殺天使ドクロちゃん』第2巻より。こんな感じですべてのクレジットに追加情報が記述されています。
 『撲殺天使ドクロちゃん』には、本エントリで取り上げた板倉玄も「ビデオ編集」として参加しています。各EDにおける付加内容とともに、クレジットの「ビデオ編集」の部分を抜粋してみます。

巻数 クレジット内容 「ビデオ編集」クレジット
第1巻 名前のみ 板倉 玄 白井基記
第2巻 名前+血液型 菊地美和(O型) 白井基記(O型)
板倉 玄(A型・アメリカ出張中)
第3巻 名前+12星座 菊地美和(やぎ座)
板倉 玄(しし座)・白井基記(うお座
              k○r○s作業中
第4巻 名前+出身地 板倉 玄(飯坂町) 白井基記(秋葉原

 よく見ると、ちょっとおかしいです。「アメリカ出張中」とか「k○r○s作業中」(ちなみに『鴉-KARAS-』ですね)とか、他の人にはない余計な情報が多いです。さらに、一見普通に見える第4巻も、他の人が「青森」とか「兵庫」とか都道府県レベルなのに対して、「ビデオ編集」の2人は妙に細かいです(笑)。「飯坂町」って、どこだよ(ちなみに調べてみましたが、福島県福島市にあるみたい)。
 なぜだか分かりませんが、この2005年の時点ですでに、板倉玄(あるいはキュー・テック?)はいじられキャラ」になっていたことが想像できます。

大魔法峠』(2006年)における「遊び」

 もう、余計な能書は不要ですね。さっそく紹介したいと思います。ちなみに『大魔法峠』は全4巻で計4パターンのEDクレジットがあります。『撲殺天使ドクロちゃん』のような付加情報の「遊び」はありませんが、ご期待にもれず、なぜか「ビデオ編集」というか「板倉玄」だけがおかしなことになっています。

巻数 「ビデオ編集」クレジット 備考
第1巻 板倉・ザ・玄
丸尾恵美
アンドレ・ザ・ジャイアントとかジャック・ザ・リッパーのノリ?
第2巻 エルゴ・板倉
菊地美和
立川貴巳
同時期の『エルゴプラクシー』を板倉氏が担当していたからか?
第3巻 ねこにゃん板倉
立川貴巳
同時期の『ちょこッとSister』を板倉氏が担当していたからか?
ハレンチ☆パンチねこにゃんダンス』がそのED曲でした。
第4巻 H.D.イタクラ
D.V.フジワラ
よく分からないです(笑)。HD=ハイデフ、DV=ディジタルヴィデオ?

 他の人のクレジットを一切いじっていないので、板倉氏への「異常な愛情」が嫌が応にでも伝わってきます(笑)。そして極めつけは第4巻。本エントリで取り上げた『ケメコデラックス!』のEDで水島努氏の餌食(?)になっている板倉玄&藤原英理花コンビです。同じ「ビデオ編集」でも丸尾恵美などが一切いじられていないのと対照的に、藤原英理花はいきなりいじられています。おそらく、藤原英理花もまた、板倉玄のような「いじられキャラ」のように思われます。

撲殺天使ドクロちゃん2(セカンド)』(2007年)

 ここまでの流れから、もうお分かりになるでしょう。とにかく、すごいことになっています。ちなみに『撲殺天使ドクロちゃん2(セカンド)』は全2巻で計2パターンのEDクレジットがあります。

巻数 「ビデオ編集」クレジット 備考
第1巻 いた★くら
ふじ☆わら
らき☆すた』のもじり。
第2巻 板倉・F・玄
藤原英理花A
正確には○の中にA。藤子不二雄のもじり。

 ちなみに第1巻の『らき☆すた』ネタは、第3話のコンテ・演出を『らき☆すた』監督を途中降板した山本寛(通称ヤマカン)が務めていることからだと考えられます。また第2巻の藤子不二雄ネタは、水島努と『ドラえもん』あるいは藤子プロとの確執(詳細は書かないので、各自ググってください)だったり、そもそも『撲殺天使ドクロちゃん』自体が『ドラえもん』のパロディになっていることからネタ元にしていると考えられます。
 とにかく、現在放送中の『ケメコデラックス!』のEDクレジットの謎は、水島努作品の変遷を辿ることで、だいたい見えてきたのではないでしょうか。

まとめ:板倉玄とは何者なのか?

 というわけで、ここまでいかに板倉玄(および藤原英理花)が「いじられキャラ」なのかを辿ってきたわけですが、実際に板倉玄とはどのような人なのでしょうか。というわけで検索したところ、板倉氏が氏の所属する株式会社キュー・テックの中途採用ホームページに掲載されていますので、ご覧ください。
 ここから分かるのは、板倉玄が仕事に真面目な人間で、「監督に対し、「こう編集したほうがより心に響く映像になるのでは?」といったクリエイティブな提案」ができるような人ということでしょう。端的に言えば、優秀なエディタということです。さらには、おそらく人間性豊かな人物だと思われ、監督等のスタッフと良い関係を築けているのではないかと想像できます。EDクレジットを入れる作業は、「ビデオ編集」で行われる作業だと考えられます。その際に、監督と育まれた良い関係性の中で、このような「遊び」が生まれたのではないか、と推測できます。
 「ビデオ編集」という仕事は、あまり目立つ仕事ではないと思われます。しかし作品を支えている必要不可欠な仕事であり、そこに本エントリのような形で注目することができて良かったと思います。よくよく調べると、板倉玄は数多くの作品に参加されていて、この人なしに自分たちはTVアニメを見ることはできないということを学びました。これからも素晴らしい作品をよろしくお願いします!板倉さん!……インプレスムック『メイキングボックス アニメとマンガの制作現場』あたりで「ビデオ編集」も取り上げてくれれば嬉しいのにな、などとひとりごちながら、冬の雨の冷たさに身をすくめる連休最終日でございます。

*1:本当はここに元ショウゲート伊平崇耶Pを加えたいのですが、ショウゲートの方針転換(?)と氏の日活への転職から、『ケメコデラックス!』には参加していないのです。

ニコニコ生放送の新仕様から考える理想/現実のギャップの埋め方

 あのニコニコ動画が誇るリアルタイム動画配信サービス「ニコニコ生放送」といえば、本日2008年11月20日も「IKZO降臨祭」なるイベント(?)が行われていたようです。2007年春〜夏はニコニコ動画に心も体も毒されていたnoir_kこと自分ですが、うまいこと時の流れとともにデトックスに成功し、今ははてなに心も体も毒されているというわけです(笑)。結局何も変わっていないような気もしますが、へへへ。でIKZOって何だろう、と検索してみれば、なんと、吉幾三のことのようですね!……すごいなあ、吉幾三。こんなことになっているとは知らなかったです。
 とまあ、必要以上に非ニコニコ動画ユーザを気取ってみましたが、まあそこまで見てないわけでもないです(笑)。ただ、以前に比べると直接ニコニコ動画上をうろうろしたりすることが少なくなり、他サイトのリンクを経由して訪れることが多くなったのは事実だったりします。単純に、テレビ放送されていたアニメの違法アップ動画がなくなったからかも……と、少々危険なことを感じたりもしていますが(冗談ですよっ!)。ただJASRAC包括契約したのはとても偉いと思っていて、演奏動画でもアップしようかと思ったくらいです。……って、これはもう半年以上前のことですが(笑)。相も変わらず、時勢に乗るのが下手糞なのです。サーセンニコニコ動画風に)。ちなみに好きなジャンルは料理動画です。あとニコニコ国際映画祭も好きです。
 そんなニコニコ生放送ですが、今月の初旬に仕様が変更されたようです(ニコニコニュース)。おそらくアニメ『Candy boy』先行上映会の前後だと思われます。自分としてはそんなことより、同日のニコニコ動画の評論ブーム?(ニコニコニュース)という「ゼロアカ道場」紹介記事で当サイトへのリンクが貼られ、どうなることかとビクビクしていました。まあ、実際は大してアクセスも増えなかったのですが(笑)。期待しすぎて損したぜ。
 その仕様変更が喧々囂々+侃々諤々=喧々諤々といった感じだったようです。例えばニコニコ生放送の新仕様が酷すぎる(未来私考)などからうかがえます。何がそんなに問題なのか、とまずは変更前後の仕様を要約してみます。

  • 変更前
    • 有料会員:予定時刻の10分前から優先的に視聴できる。
    • 無料会員:予定時刻かっきりから視聴できる。
  • 変更後
    • 有料会員:常に優先され、満員時でもすでに視聴中の一般会員をおしのけて視聴できる。
    • 無料会員:視聴可能だが、満員時にはプレミアム会員が優先され、視聴中でもはじき出される可能性がある。

※有料会員=プレミアム会員、無料会員=一般会員

 個人的には有料v.s.無料ということは問題だとは思っていなくて(何らかの形で差別化が図られるのは、当然でしょう)、問題は無料会員の扱い方に集約していると考えています。つまり、無料会員にとっては、何もしていないのに、いきなり不便になるわけです。端的に、これは良くないと思います。今日はそんな話をちらほらと。

美人を表現するために、不美人を登場させるということ

 大抵の物事は相対的な差異によって判断されるので、例えば美人を表現したかったら、その周囲に「引き立て役」となる不美人を配置すれば良いはずです。これはなかなか効果的と考えられ、最近の事例では、アニメ『かんなぎ』の第3話「スクールの女神」で唐突に森三中のパロディ(?)みたいな3人組が出てきたのは、ナギの美しさを際立たせるための演出と捉えることができるかもしれません。

※アニメ『かんなぎ』第3話より。この指摘はネット上のどこか(失念しました)で見たものです。
 いきなり話が飛んだようですが、しっかり繋がっている(はず)なのでご安心ください。この事例を先のニコニコ動画の件に重ね合わせることができます。すなわち、プレミアム会員の優位性を「偽装」するために、一般会員のサービスの質を低下させることとなります。いかがでしょうか。
 このようなことは今回のニコニコ生放送仕様変更のみならず、ニコニコ動画にプレミアム会員制度が登場したときから指摘されていることと思われます。上位の優位性を出すために、下位の質を意図的に下げるのは、本末転倒だと言わざるを得ません。本来は上位により優れたサービスを提供するのが筋というもので、下位を維持しなければ(できなければ)、全体的な質の低下が起こったのと同じです。

需要と供給のバランスにおいて、どちらを優先するか

 これを需要と供給のバランスとして捉えなおすこともできます。需要と供給のバランスが崩れている(特に「需要<供給」)ときに、需要を供給に追従させるのか、それとも供給を需要に追従させるのかの違いです。需要に供給を追従させて、供給を低下させれば、確かに損失は小さくなります。ただし、その市場価値は低下し、負のスパイラルとともに需要がより低下していくのが想像できます。そうなったら、同様に供給も低下せざるをえなくなり、最終的には悲しい現実を迎えることになるでしょう。
 逆に供給を需要に追従させる、すなわち供給量を削るのではなく、その供給量に見合うだけの需要を生む場合はどうでしょうか。具体的に「需要を増やす」にはどうすれば良いのかは難しい問題ですし、難易度も無茶苦茶高いのですが(笑)。その時には、先程とは逆に、正のスパイラルとともに市場価値を増していくことでしょう。……まあ、こんな単純な話ではないのは、重々承知していますが。

現実と理想のギャップをどう埋めるか

 理想と現実というものは、往々にして理想>現実という不等式が成立します。では、このギャップをいかにして人は乗り越えていけば良いのでしょうか。ここにも上と同じ議論が適用できます。
 高すぎる理想を、ぎりぎり可能な現実まで引き下げるのでしょうか?それとも、努力によって現実を理想のレヴェルまで持ち上げるのでしょうか?
 世知辛い世間、辛い人生を少しでも心穏やかに過ごしていこうと思うなら、自分の中の理想ラインを下げるのは実効性の高い戦略だと思われます。ただ、上の需要/供給の例で取り上げたように、それで本当に良いのか疑問が残ります。もちろん、価値というものは主観的で相対的なものですから、このような消極的戦略でも十分かもしれません。それでも、そこにあるのは「偽装」された「まやかし」の満足・充実かもしれません。
 せっかくならば自分の意識を改革するだけではなく、現実の方を改革していきたいものです。だけど、そういう積極性って難しいよなあ、などと映画を見た後に急に冬めいてきた寒空の下で身を縮こませながら考えたりするわけです。ああ、本当に寒くなってきたなあ。あと、本はてダは季節ネタを言い訳に締めることが多いなあ、と自己反省。

『かんなぎ』におけるダメ食事の栄養価およびコストパフォーマンス

 さて皆さんご存知かもしれませんが、昨日11月11日ポッキー&プリッツの日であったり、『ゲゲゲの鬼太郎』&下駄の日であったり、煙突の日だったり、電池の日だったり、あと真面目な話をすると第一次世界大戦終戦日であったりします。その中でもポッキー&プリッツの日というのが個人的には印象が強く、例えば渋谷などではポッキー&プリッツを配るキャンペーンが実施されていたように記憶しています。
 そういえば、この11月11日=ポッキー&プリッツの日というのも、グリコが勝手に提唱しているのではなく、ちゃんと日本記念日協会に登録されている正式な記念日です。ちなみに以前調べたことがあるのですが、この記念日登録は意外と簡単で、登録料は10万5000円/1件しかかからず、しかも審査に合格するまでの審査費用はかからないという安心設計。日本記念日協会:登録ページから登録できますので、是非(『アイマス』記念日とか、さ)。と、まずはちょっとしたトリビアから始まりました。
 ポッキーを食べるときは、まあ普通にポリポリ食べると思うのですが(自分は前歯でチョコレート部分のみをこそげ落としてから食べるのが好きですが、だいたいの人に拒絶されます。君だって『きのこの山』はチョコレート部分をこそげ落としてから食べるくせにっ!)、ちょっと工夫した食べ方もあります。お菓子を用いて料理風にするという趣向「リトルグルメ」で人気を博した『OH! MYコンブ』というまんが・アニメがありましたが、その中にはポッキーを用いた料理も載っています。今家の中で単行本を探したけれど見つからなかったので、HOBBY_SPACE_HIGEPAPAから引用させていただきます。

こんがりポッキートースト

  • 作り方:パンにポッキーを5本並べて丸めて楊枝で止め、オーブンで焼く

かみやたかひろ(原作:秋元康)『OH! MYコンブ』第1巻より

 まあ「シンプル・イズ・ベスト」といった感じのものですが、なかなか美味しそう(?)。手軽なのは間違いありません。でもこんな食事じゃ、栄養バランスなんかも気になります。……なかなかエントリ名の内容に入らないと嘆かないでください。もうそろそろです。
 というわけで、やっとこさアニメ『かんなぎ』についてです。アニメ第4話「シスターズ」を見ていると、御厨仁およびナギが奇妙な食事をしているのに気が付きます。ご飯に砕いた「うまい棒」らしきお菓子をふりかけたり、食パンに「うまい棒」らしきお菓子を挟んだり……。これが「ギミック」ってやつですか!ヤマカン先生!
 そんな冗談はおいておいて(笑)、この食事はどうなのでしょうか。第5話「発現!しょくたくまじんを愛せよ」でも、ざんげに「いつも粗末な物ばかり食べてるそうじゃないですか。ですから私、作ってきたんです。栄養価の高い物を」なんて言われています。ちなみにあの謎食事のシーンはアニメオリジナルではなく、原作まんがのママになっています(第1巻157-158,173ページ、第2巻25ページ参照)。
 では、実際あの謎メニューの栄養価はいかがなものなのでしょうか?合わせて、そのコストパフォーマンスを算出してみようと思います。……ふぅ、やっと本題に入れた。ただ、栄養価といっても簡単のため、カロリー(エネルギ)だけを対象にします。

謎メニュー一覧

 まず第4話「シスターズ」で確認できる奇妙な食事を紹介します。全部で5回登場します。

  1. ドレッシングご飯+味噌汁+お茶
  2. ソースご飯+味噌汁+お茶
  3. 「おいしん棒」ごはん+味噌汁+お茶
  4. ソース食パン+水
  5. 「おいしん棒」食パン+水

 ちなみに上3つは朝食、下2つは夕食の献立です。こんな食事じゃ、体を壊しちゃうよ!というわけで、特に謎な5品目について、カロリーおよびコストを調べてみました。また以下の計算において、ドレッシングはキューピー「フレンチドレッシング(白)」1000ml、ソースはブルドッグ「中濃ソース」500g、「おいしん棒」はやおきん「うまい棒」、ご飯は魚沼産コシヒカリ5kg、食パンはヤマザキパン「超芳醇」6枚切りを元に算出しました。

ドレッシングご飯

素材 使用量 価格 カロリー コストパフォーマンス
キュービーフレンチドレッシング 100g 60円 400kcal 0.15円/kcal
ご飯(大盛り) 200g 130円 340kcal 0.4円/kcal
合計 300g 190円 740kcal 0.26円/kcal

作り方:ご飯にドレッシングをかけるだけ。簡単!

ソースご飯

素材 使用量 価格 カロリー コストパフォーマンス
中濃ソース 40g 35円 80kcal 0.44円/kcal
ご飯(普通盛り) 150g 100円 250kcal 0.4円/kcal
合計 190g 135円 330kcal 0.4円/kcal

作り方:ご飯にソースをかけるだけ。簡単!

「おいしん棒」ご飯

素材 使用量 価格 カロリー コストパフォーマンス
おいしん棒(すし味) 10g 10円 55kcal 0.18円/kcal
おいしん棒(クールミント味) 10g 10円 55kcal 0.18円/kcal
ご飯(超盛り) 250g 160円 430kcal 0.4円/kcal
合計 270g 180円 540kcal 0.33円/kcal

作り方:テーブルの上に置いた「おいしん棒」を手刀でリズミカルに叩き砕いた後、袋の上からもみもみして、ご飯の上にかけるだけ。簡単!

ソース食パン

素材 使用量 価格 カロリー コストパフォーマンス
中濃ソース 30g 26円 60kcal 0.44円/kcal
食パン(1枚) 60g 30円 160kcal 0.19円/kcal
合計 90g 56円 220kcal 0.25円/kcal

作り方:食パンにソースをかけるだけ。簡単!

「おいしん棒」食パン

素材 使用量 価格 カロリー コストパフォーマンス
おいしん棒(クールミント味) 10g 10円 55kcal 0.18円/kcal
食パン(1枚) 60g 30円 160kcal 0.19円/kcal
合計 70g 40円 215kcal 0.19円/kcal

作り方:食パンの中央に、袋から取り出した「おいしん棒」を乗せ、挟むだけ。簡単!

各メニューにおけるカロリー、コストパフォーマンス

 また味噌汁(インスタント)は約200g、50円、40kcalですので、コストパフォーマンスは1.25円/kcalになります。お茶、水は0円、0kcalとすると、最初の5つのメニューのカロリーおよびコストパフォーマンスは次のようになります。

番号 メニュー 使用量 価格 カロリー コストパフォーマンス
1 ドレッシングご飯+味噌汁+お茶 500g 240円 780kcal 0.3円/kcal
2 ソースご飯+味噌汁+お茶 390g 185円 370kcal 0.5円/kcal
3 「おいしん棒」ごはん+味噌汁+お茶 470g 230円 580kcal 0.4円/kcal
4 ソース食パン+水 90g 56円 220kcal 0.25円/kcal
5 「おいしん棒」食パン+水 70g 40円 215kcal 0.19円/kcal

 ちなみに、比較的若い成人男性が1日に必要な摂取カロリーは2500kcal、成人女性では2000kcalくらいと言われています。ちなみにドレッシングご飯(740kcal)というのは、だいたい牛丼に匹敵するカロリー量です。ただ、このメニューのみで必要カロリーを摂取しようと思うと、1日に6食〜10食くらい摂らなければいけません。栄養失調で倒れてしまいます。……って、何を当たり前のことを言ってるんだ自分は
 またカロリーのコストパフォーマンスですが、たとえばカロリーメイト・ブロック(1本)が100kcal、50円ですので0.5円/kcalになります。それを考えると、かなりコストパフォーマンスの良い食事になっていますね(笑)。ドレッシング、ソース、「うまい棒」をかけるというのは、文字通りカロリーをかけているのと同じです。ちなみに牛丼のコストパフォーマンスは0.57円/kcalくらいです。あと意外と驚きなのが、「うまい棒」のコストパフォーマンスと食パンのコストパフォーマンスが、ほぼ同程度であること。食パンのコストパフォーマンスの高さは、今回調べるまで知りませんでした。これが自分にとって、唯一の収穫でした(笑)。
 まあ、一応まとめらしいことを書いておくと、このような奇天烈な食事をしていると、当たり前ですが倒れてしまいます。お金のない学生諸君は、上のメニューでももっともコストパフォーマンスの高い「おいしん棒」食パンに挑戦するのもよいですが、体を第一に。そもそも、「おいしん棒」食パンは美味しくないと思うのですが。挑戦した方がいましたら、感想をコメントしてくれると嬉しいです。

おまけ

 そういえばWikipediaには書けない『ひだまりスケッチ×365』オープニングの各話による違いで触れたのですが、『ひだまりスケッチ×365』オープニング映像中で宮子がソースご飯を食べています(第13話)。他に今回の『かんなぎ』メニューに近いところでは、マヨネーズ食パン(第11話)を食べています。せっかくなのでカロリーを計算してみました。

マヨネーズ食パン

素材 使用量 価格 カロリー コストパフォーマンス
マヨネーズ 10g 10円 70kcal 0.14円/kcal
食パン(1枚) 60g 30円 160kcal 0.19円/kcal
合計 70g 40円 235kcal 0.17円/kcal

※マヨネーズはキューピー「マヨネーズ」350gを元に算出しました。
 というわけで、このマヨネーズ食パンが一番コストパフォーマンスが高いという結論になりました。……ああ、なんで自分はこんなに下らないエントリを書いてしまったのだろう。後悔先に立たず、ってやつですね。ブルルル。ああ寒い。もう冬ですねえ(しんみり)。

おまけ2

 ブックマークコメントで味噌汁に牛乳も追加で(ryというのをいただきました。ありがとうございます。というわけで、アニメ第5話「発現!しょくたくまじんを愛せよ」に出てくる「牛乳味噌汁」のカロリーおよびコストパフォーマンスです。ちなみに、これも原作ママです(第2巻86ページ参照)。

牛乳味噌汁

素材 使用量 価格 カロリー コストパフォーマンス
味噌汁 200g 50円 40kcal 1.25円/kcal
牛乳 50g 13円 35kcal 0.37円/kcal
合計 250g 63円 75kcal 0.84円/kcal

※牛乳は明治乳業「おいしい牛乳」1Lパックを元に算出しました。作中のパッケージの牛乳が見つからなかったのです。もし分かる方がいたら、教えていただけると嬉しいです。
※ちなみに、代わりといっちゃ何ですがNAGI牛乳なんてのを見つけました。
 味噌汁に1/4の牛乳を加えることで、コストパフォーマンスを3割向上させることができるというのは、新鮮な驚きです。ちなみに牛乳味噌汁は、どこかのグルメまんがで読んだのだと思いますが、普通にある食べ方らしいです。新谷良子の「キュウリ味噌汁」くらいの感覚ではないでしょうか。
 そういえば、ちょっと前のアニラジ界で流行っていた「牛乳ご飯」なるものがあります。せっかくなので、これも計算してみました。

牛乳ご飯
素材 使用量 価格 カロリー コストパフォーマンス
ご飯 150g 100円 250kcal 0.4円/kcal
牛乳 50g 13円 35kcal 0.37円/kcal
合計 200g 113円 285kcal 0.4円/kcal

 ご飯も牛乳も、コストパフォーマンスは約0.4円なので、かけてもかけなくてもほとんど変化ありません。ちなみに、リゾット的な味になって美味しいという噂です。お試しあれ。

没ネタリサイクル:ちょっと面白い言葉×10連発

 おかげさまで多くの方に見ていただけるようになってきた当はてダですが(ありがとうございます!今後もよろしく!)、なんだか「クソ真面目なブログ」だと誤解(笑)されているような気がぷんぷんします。妙に長々しく書くからいけないんだろうな、きっと……。というわけで、今回は自分がいかに下らない人間なのかをアピール(笑)すべく、ネタ帳公開をしたいと思います。
 というのもですね、11月になってから、書店をはじめ至るところで、来年用のスケジュール帳を目にする機会が多くなりました。そんなわけで自分も来年用のスケジュール帳を購入したのですが、今年のスケジュール帳のメモ欄に日々ぽつぽつと蓄積してきた「ネタ」がそれなりに残っているのです。これをそのまま闇に葬り去るのはもったいないので、なんとか消化していきたいのですが、どうにもこうにも使えないようなネタ(特に一発ネタみたいの)が結構あるのです。ですので、本エントリでは「ちょっと面白い言葉」と題して、ネタ帳からそんな感じの一発ネタを紹介していこうと思います。
 ちなみに、本エントリの趣旨は、先日行われたトークイベント「飯野賢治とヨシナガの『気になること。2』」のラストでヨシナガさん(僕の見た秩序。)が自分のネタ帳(携帯電話のメモ機能でした)を一部公開していたのに多少インスパイアされています。あと、たまには一発勝負ド直球の短いエントリを書いてみたいんだ。なんて書いているうちに、嗚呼、どんどん長くなる……
 はっきり言って、本エントリは意味不明だと思います。その点だけ覚悟していただけると、これ幸いです。字面を眺めて微妙な気持ちになってください。ちょっとでもクスッとするようならば、自分と相性良いのかもしれません。おめでとうございます。あと、怒らないでね。それでは10連発、どうぞ!

その1:どこかのCMでありました

「実は私、痔なんです」=「実は私、次男です」

 確か『ボラギノール』のCMです。静止画スチル写真の連続による、お見合いを舞台にしたCMで、男性が「痔なんです」と言うと相手の女性が意気投合するというものでした。きっと、こういう分かりにくい駄洒落なのではないかな、と深読みをした記憶があります。ボラギノールCMインデックスにある2007年の「お見合い編」ですね。

その2:ありそでなさそなラジオネーム

仮名・亀井静香

 某ラジオ番組では「トムクルーズ本人」なんて常連投稿者がいるくらいです。違う某ラジオ番組では「おばあちゃんの本名OK海老沢ミツ」なんてのもいましたね。じゃあ、こんなラジオネームもありじゃね?普通に『爆笑問題カーボーイ』あたりにいそうな気もしますが。

その3:殺伐とした早口言葉

親殺し子殺し孫殺し

 うーん、殺伐(笑)。オヤゴロシコゴロシマゴゴロシ。「赤巻紙青巻紙黄巻紙」系統ですね。3代わたって!

その4:西尾維新の著作っぽい?

オヤシラズコロシアム

 「コロシアム」って「殺し」と掛かってるから、西尾維新ぽいんだよね。戯言シリーズのリストにさりげなく紛れ込ましても、気づかれないんじゃない?我ながら、妙に語呂が良い。自画自賛

その5:矛盾してる?

訪問した際には伺わなかったのですが……

 何か質問しに行ったのだけど、後で電話やメールで追加の質問。意外とよくあるシチュエーションだと思います。話を「伺う」=聞くのも、どこかへ「伺う」=行くのも、漢字は一緒。だけど、いざ字にすると違和感があります。どっちだよ!

その6:年を取ると東京タワーに飾られます

老化現象=蝋化現象

 死蝋?死んだら蝋人形になって東京タワーの蝋人形館に飾られるような、立派な人間になりたい。その前に、早く人間になりたい。

その7:東西・大学生の数式

東大阪大生=東大生+阪大生

 ごめん。これに関しては、自分でも何でこんなメモを残しておいたのか分からない。全然分からない。我ながら、全然面白くない。本当に、ごめん。

その8:逮捕しないでね♥

くるみ小女子

 近所の総菜屋の一品。例の犯行予告やら偽計業務妨害やら以降、この文字列を見るたびに『鋼鉄天使くるみ』的な小学生女子を夢想するようになってしまいました。何なら実写版『鋼鉄天使くるみpure』の方でも可。……そいえば、IMEで「おこなご」は一発変換できませんでした。ずっと「おこなご」だと思ってたんだけど、「こうなご」みたいです。こんなところで勉強になりました。

その9:逆プラシーボ

偽薬効果=逆効果

 ぎやくこうか。偽薬効果(プラシーボ)とは、偽者の薬でも本人が薬だと信じていれば効果がでるといった現象。疲れている友達に、「魔法のお薬だよ。ヒヒヒヒヒヒ」と言いながらビタミン剤をあげましょう。時にはそれは逆効果になることも。偽薬でも副作用の偽薬効果が働いたりするんです。人間の妄想力は凄い!病は気から!

その10:英語のお時間

スワロウ=シットダウン

 スワロウはswallow(ツバメ)。ヤクルトの野球団でお馴染みです。だから、シットダウン(座ろう)。……過去の自分の駄洒落を解説することほど虚しいことはないな。本当に。何で過去の自分はこんな下らないことばかり思いついては書き残しておいたんだろう。いつか役に立つ日が来るでも信じてたのかなあ。

 というわけで、以上「ちょっと面白い言葉10連発」でした。自分がいかに下らない人間かお分かりになったと思います。ちなみに、こういう類の言葉遊びは昔から好きでした。例えば小学生の時分のことですが、算数の授業で「点C」が出てくるたび「エンジェル」(点C=天使)を想像していました。そんな自分ですが『みすて・ないでデイジー』!……こういう無理矢理駄洒落を入れてくるのが、自分の悪いところだなあ。これからも、よろしくメカドック

メタフィクショナルな言動とメディアミックス『かんなぎ』

 さて、以前から期待している!と言いながらも、当はてダでほとんど触れてこなかった『かんなぎ』ですが、ついに触れることとなりました。拍手!……というのも、遅ればせながら原作まんが第1巻を読みました。第1巻はすでにアニメで放映済みの内容なのですが(ちなみにアニメ第5話Aパートまでの内容)、単体でも面白いものだと感じましたし、アニメ版とあわせてもなかなか興味深いと思います。そんな中、ちょっとしたことに気が付きました。それは、作中における登場人物のメタフィクショナルな言動についてです。

登場人物によるメタフィクショナルな言動

 まずは、次にあげる2つのシーンにおけるアニメおよび原作まんがでのセリフを紹介します。

ナギの嘘(二重人格であること)がばれるシーン

 ナギと一緒に住んでいるのを幼馴染のつぐみに知られたしまった御厨。ナギは二重人格を装って危機を回避するが、御厨もまたナギの二重人格が真実だと信じてしまう。直後、会話の中ですぐにボロを出してしまうナギ。そこで一言。

  • アニメ第2話「玉音アタック!」より
    • ナギ「し、しもうた…。Aパート終わらぬうちにバラしてしもうた」
  • まんが第2話「玉音を聴いた」第1巻60ページ4コマ目より
    • ナギ「し、しもうた…/たった2P(ページ)でバラしてしもうた」
秋葉がうらやましい状況の御厨を殴るシーン

 御厨に内緒で学校に現れたナギ。その噂を聞いた秋葉は美少女に囲まれた生活を送る(?)御厨を思わず殴ってしまう。「すまん/情動に任せたら手が出てしまった!/なんという奴だお前は!/美少女の幼なじみだけでは飽きたらず」に続く一言。

  • アニメ第3話「スクールの女神」より
    • 秋葉「僕は今確信したよ……。この世界が漫画なら、主人公は、お前だ…」
  • まんが第4話「スクールデイズ」第1巻118ページ4コマ目より
    • 秋葉「僕は今確信したよ……/この世界が漫画であるとしたら主人公はお前だ…」

 いかがでしょうか。シーンの概要はお分かりになりましたか。この2つのセリフ、そして原作まんがとアニメ版の差異について考えたいと思います。

メタフィクショナルな言動におけるメディアによる差異

 以上を「メタフィクショナルな言動」と呼びましたが、ここでは「世界がフィクションであることを認識あるいは示唆するような言動」という意味で用いています。一種の「異化効果」というやつだと思いますが、現代においてはある種のギャグテクニックとして様々なメディアにおいて用いられているように見受けられます。
 このシーンにおけるセリフですが、一見して明らかなように、原作まんがとアニメ版では少々セリフが異なります。まずはその差異をおさらいしましょう。ちなみにアニメ化における脚本化は、ともに倉田英之が務めています。

シーン 原作まんが アニメ
1 たった2P(ページ) Aパート終わらぬうち
2 この世界が漫画であるとしたら この世界が漫画なら

 シーン1(玉音を聴いた)では、原作まんがでの「たった2P(ページ)で」という表現がしっかりと「アニメ化」されて「Aパート終わらぬうち」に変化しています。これは正しい「アニメ化」であり、もとのままの表現では一切意味が通じなくなってしまうシーンです。
 一方、シーン2(スクールデイズ)では、原作まんがでの「この世界が漫画であるとしたら」という表現は、アニメにおいてもほぼ同内容の「この世界が漫画なら」として変化していません。シーン1のような「アニメ化」が正しいとすれば、このシーンは「この世界がアニメであるとしたら」と変換されるべきでしょう。しかし、実際にはそのような変更はなされていません。
 では、このセリフはアニメ化に際してどのように処理されるべきなのでしょうか。

同一メディア内だからこそ、意味がある

 結論から先に申しますと、自分としては「この世界がアニメであるとしたら」に変更するべきだした方が良いと考えています。それは同一メディア内での表現にしなくては、純粋な意味でのメタフィクション性が失われてしまうと考えるからです。
 たしかに原作のままの「この世界が漫画であるとしたら」のままでも十分意味は通じます。しかし、アニメの世界でそのような言葉を言わせても、それはただの比喩に過ぎません。
 現実世界でハーレム状態にあるひとに向かって「この世界が漫画であるとしたら、主人公はお前だ」と言うのも「この世界がアニメであるとしたら、主人公はお前だ」と言うのも、それはともにただの比喩に過ぎません。しかし、まんがやアニメの世界の中でそのような言葉が発せられるのは、それを鑑賞している読者・視聴者にとって全く異なる意味を与えてくれるのです。それが「メタフィクション」というものだと思います。
 メディアを超えてコンテンツを作る際に、このような視点を失ってはいけないと思います。という、最近の映像化によって失われる記号的リアリティ『とらドラ!』「ゆのパンツ」から考える4コマまんがのアニメ化『ひだまりスケッチ×365』のようなアニメ化あら探しみたいなメディアミックスの弱点を突くだけの結論になってしまいました(笑)。なんか、いちゃもん付けたいわけではないんですよ!本当と書いてマジで!……もちろん、今回の『かんなぎ』に限らず、意図的に原作の表現を残す可能性もあります。ただ、個人的にはこのように考えているという意思表示です。無批判的に原作を「忠実に」アニメ化したんじゃないかと疑いたくもなりますよー。
 最後に。このエントリを書き上げて1時間もしないうちに、ヤマカンこと山本寛監督は前人未踏ならぬ「前ヤマカン未到」の監督第5話へ踏み出すわけです。まずはそれに祝福を。そして完走を「祈念」いたします。kannagi☆だけにね!(微妙な駄洒落だ……)

追記:アニメ第6話におけるメタフィクショナルな言動

 部活動の最中に突然、美術部部長(木村貴子)が「メイド喫茶に行こうと思うのよ」と言い出す。それに対する副部長大河内紫乃の反応(ボケ)と部長からの応答(ツッコミ)。

  • アニメ第6話「ナギたんのドキドキクレイジー」より
    • 副部長「担当のタナベさんにお願いすれば行けるかもしれませんわね」
    • 部長「そういう楽屋オチはコメンタリーでやって
  • まんが第11話「あの娘はクレイジー」第2巻97ページ3コマ目より
    • 副部長「仏さんじょ先生にお願いすれば行けるかもしれませんわね」
    • 部長「そういう楽屋オチ的なギャグはお呼びでないわ

 エンディングクレジットを見ると、タナベさん=田辺亮(「月刊Comic REX」編集部、企画協力としてクレジットされている)と分かるけれど、誰だよ!ちなみに仏さんじょ先生とは、『かんなぎ』が連載されている「Comic REX」で『ろりぽ∞』を連載中のまんが家さんです。ま、個人的には誰だよ!って感じですが、単行本派でなく連載派のひとにとっては、良いチョイスではないかと思います。
 ただ個人的な感想としては「担当のタナベさん」の知名度があまりにも低いのではないかと思ってしまいます。だからこその「楽屋オチ」なのですが、こういうフックはベタにやってしまっても良いのでは。本作におけるメタレベル(=現実)の有名人は、ずばり監督である山本寛ことヤマカンと、シリーズ構成・脚本の倉田英之、そして原作者である武梨えりといった面子でしょう。この3人はアニメ第5話「発現!しょくたくまじんを愛せよ」でもネタとして取り上げられている3人でもあります。彼/彼女らが本当にメイド喫茶に詳しいかは知りませんが、ここではそのことは絶対ではありません。知名度的にいえば、ここは「監督のヤマカンにお願いすれば……」とかでも良かったのではないかと思っています。個人的意見ですが(アニメ制作の最高責任者=神でもあるわけで、メタフィクションとしての面白さもありますし)。
 また、楽屋オチ的なギャグはお呼びでないわ⇒コメンタリーでやって、というのはとても良いアニメ化だと思います。はい。ていうか、全体的に良かったですね。第6話。

おまけ『図書館戦争』アニメ化はなぜ失敗したか

 いきなり失礼な小見出しで申し訳ありません(笑)。失敗したかどうかは、どの基準で見るかにもよりますが、あくまでも個人的には失敗と感じているだけです。その理由はいろいろあると思うのですが、本質的で大きな理由が原作自体にあると思っています。端的に言うと、それが本エントリで指摘しているメタフィクション性であり、『図書館戦争』という小説は本の中で本を守るために戦うというメタフィクション性というか二重構造が大きな意味を持っていると考えています。ですので、本質的にアニメ化に向いていないのではないかと思うのですよ。あ、このセクションは一視聴者の戯言ですので、さらっと聞き流してくれると嬉しいです。ぺこり。

劇場型娯楽は制作者にとって幸せだなあ、という話

 まだ夕方5時だというのに真っ暗な街を見下ろし、大きなため息を漏らしながら冬の訪れを感じる今日この頃。いかがお過ごしでしょうか。なかなかセンチメンタルで季節感に溢れる語り出しですが、相も変わらず季節感ゼロの話題で(笑)。というわけで、今日は様々な形態の娯楽について、ちらほら書いていこうと思います。

許されざる(?)視聴方法

 というのも、発想元(≠発送元)はこちらのエントリ。

 エントリ名については(あえて?)触れませんが、このエントリの中で気になる点が。著者も太字で強調しているということで確信犯(誤用)と思われるのですが、ばしゅっと引用させていただきます。

(アニメを)1.75倍速にして1日2〜3本ぐらい見ていた

 うん。これは技術の勝利だな。そのように自分は感じました。もちろん、このような高速再生でアニメを見るようなことは(アニメに限らず)自分はしませんし、したいとも思いません。そのようにして見ても、何も良いことはないと思います。しかし、技術的に、しかも容易にそのような視聴方法で視聴できる環境を万人が持てる以上、そのように視聴する権利が視聴者にはあるのです。自分たちにできることは、そのような人を横目で見ながら「貧しいな……」なんてひとりごちることくらいです。
 おそらく多くの人は、このような視聴方法を否定するでしょう。それでは、あまりにも制作者に対する愛がなさ過ぎる、と。しかし、録画してアニメを見ている場合、ついついCMを飛ばしたりしていませんか?もしかしたら制作者は(まあDVD化することが前提の作品が殆どですが)CMの1分間がもたらす心的効果を狙って作品を作っているかもしれないのに(そんなに大層な話ではなくて、ヒキ・タメみたいなものです)。では、どこまで許される視聴法で、どこからが許されざる視聴法なのでしょうか。

視聴方法を(ある程度)限定できる劇場型メディアのアドバンテージ

 2008年10月13日深夜に放送されたTBSラジオ伊集院光 深夜の馬鹿力』においてパーソナリティである伊集院光は、黒澤明『悪い奴ほどよく眠る』を見ていると主人公にピンチが迫っていると感情移入するあまり再生を停止させてしまいそうになることや、『天国と地獄』で捜査員が犯人を追跡していると薄暗く覚せい剤中毒者がたむろっているような路地に入っていくという「先の見えない展開」を早送りしてしまいそうになる感情を吐露しています。そして、そのようなことを「やってしまったもん負け」だと伊集院光は言うのです。
 まったくその通りなのですが、制作者は作品がどのように受容されるか限定することはできません。例えば、音楽の受容は以前は屋内でスピーカを用いるのが一般的でしたが、1979年のウォークマンの登場以降は屋外でも受容されます。映像に関しても同じで、録画再生機の普及にともない、前述のような「効率の良い」視聴方法が可能になった以上、それもまたひとつの受容の形といわざるを得ません。
 小説を例に考えると、1本の小説を一気に読みきる人というのは、そんなに多くないのではないかと思います。それは先の例で言えば、映像作品をちょこちょこ停止再生を繰り返しながら見ているような行為に相当します。電車の中を観察すると、音楽を聴きながら文庫本をめくっている人も少なくありません。喫茶店に行けば、何か食べたり飲んだりしながらの人も多いです。そのような受容方法は、おそらく純粋に作品に向き合っていないという意味で、受容方法として最適なものではないかもしれません。しかし、作者(制作者)はそれに対して文句を言うことはできないと思いますし、現に言っていないと思います。
 したがって、制作者はどこまで作品の受容方法をコントロールできるか、また受容方法によらず一定の効果を上げるような作品制作を行えるかが鍵になってきます。つまり、どちらにせよ受容者の個体差を減らすという方向性です。すると、映画や演劇のような劇場型メディアには強烈なアドバンテージがあるのに気が付きます。自分は映画および映画館が結構好きなのですが、視覚以外の情報を最大限シャットアウトし、恵まれた視聴環境の中で他の何にも邪魔されることなく、最初から最後まで一息に「純粋な」受容が行われる映画というメディアは、制作者にとって大変幸せなのではないかと想像してしまいます。

制作者はどこまで考慮すべきか

 発想元のエントリのように、制作者の意図していないような受容方法の上での批判的意見はあまり誉められたものだとは思わないですし、ただ信用を失うだけだと思います。しかし、ちゃんと確信犯的に明示しているのは偉いとも思います。一時期、アニメをYoutubeで見たくらいで、見た気になるなという話がありました。それは正論ですし、Youtubeを通した視聴は明らかに制作者の意図していない(どころが、ある意味、非合法的な)視聴方法です。ただ、現代のテレビアニメを含む映像制作者は、ワンセグでの視聴は考慮しなくてはいけない。しかし一方で、フルハイビジョンの地上デジタルも考慮しなくてはいけない。以前のエントリで指摘したこともありますが、TBS/BS-iで放送されるアニメ制作者は16:9で制作しながらも4:3で放送されることも考慮しなくてはいけない。DVD作品であったら劇場クラスの大画面で上映されることも、またiPodの小さな画面で再生されることも考慮しなくてはいけない。となると、制作者はどこまで考慮していけば良いのでしょうか。
 そのような疑問には、明確で具体的な解答はありません。また全てを解決する必要ももちろんなくて、そんなことばかり気にしていたら何の映像も作れなくなってしまいます。ただ、そのような問題意識を持って制作しているか否かが重要になります。そして受容者が自発的にできるだけ良い環境(=制作者にとって理想的な受容方法)で見たくなるような作品作りを心がけることが肝要だと思われます。ひとつの解答として、新房昭之+シャフト制作の『ぱにぽにだっしゅ!』のような画面中に小ネタを仕込むテクニック(黒板ネタetc)が、有効ではないかと思われます。……とぱにぽにだっしゅ!DVDBOX発売決定!につなげてみました(笑)。おめでとうござます、氷川へきる先生!そういえば3社合同キャンペーン(『新感覚癒し系魔法少女ベホイミちゃん』+『ジャイ子ちゃんDX』+『まろまゆ』、スクウェア・エニックスエンターブレインアスキーメディアワークス)のオリジナルQUOカードが届きました!あと、あぼしまこ先生(アニメ『ぱにぽにだっしゅ!』のちびキャラデザインの人)の『たまごなま』は買いですね!そういえば、Amazonから島田フミカネ『ART WORKS』も届いたよ!と最後は良く分からない感じで(笑)。そういえば『ひだまりスケッチアルバム』は来月に延期になったようです。

おまけ:映画とテレビにおけるレイアウトの差

 と思ったけど、一応少しだけ真面目な話も。最近では映画もテレビも同じ16:9ですが、それでも画面レイアウトには違いが出るそうです。基本的には、大きなスクリーンで上映される映画ではテレビに比較して画面を引き気味(広角)にして、極端なアップを避けるそうです。うろ覚えの情報で申し訳ないのですが、劇場版『NARUTO−ナルト−疾風伝』監督の亀垣一だったか誰かは、アニメーターからあがってくるレイアウトを全て縮小コピーにかけたことがあるとか聞いたこともあります。そういう制作者の意図もあるので、劇場公開作品はできるだけ劇場で見たいな、と思う次第でございます。